滞在型"週末"田舎暮らし
「クラインガルテンの楽しい利用法」
フロインデン八千代(兵庫県多可町八千代区)
コテージ付き貸し農園「クラインガルテン」


 戦後の日本を引っ張ってきた「団塊の世代」の大量退職がまもなく本格化します。この世代の特徴はいい意味で「欲張り」なこと。自然に帰れる田舎暮らしを楽しみたい。その一方で、都会生活の便利さも捨てがたい。そうしたニーズを満たしてくれるのが、週末だけ都会を離れ、自然の中で野菜や米づくりを楽しむ「週末農業」です。その際、キーワードとなるのが「クラインガルテン」の利用。たとえば、兵庫県多可町八千代区(旧八千代町)の「クラインガルテン」もその1つ。都会から1時間半の距離にある田舎で、「いま」を楽しみ、「これから」に胸を弾ませる定年前後の人々が幸せな時間を過ごしています。
ここでは、都市と農山漁村を行き来するライフスタイルとして人気の高まっている「滞在型市民農園」の利用を紹介します。
[地域:近畿]


コテージ付き貸し農園「クラインガルテン」

フロイデン八千代
ブライベンオオヤ
ブルーメンやまと

 「クラインガルテン」って何だかわかりますか? もともとドイツ語で「小さな庭」を意味するこの言葉は、日本では「滞在型市民農園」のことを指します。「滞在型」とわざわざことわるのは、普通の市民農園とは違って、台所やトイレなどを備えたコテージ(ラウベ)がついているからです。利用者は、週に数回、ここに宿泊しながら農作業を楽しみます。
クラインガルテンは全国的に増えています。1993年から全国50弱の農園に1000区画が整備され、田舎暮らしブームも追い風となって、利用者は少しずつ増えています。
その先駆け的な存在が、兵庫県多可町八千代区(旧八千代町)のクラインガルテンです。
山あいを流れる加古川の支流、野間川沿いに集落が点在する八千代には、これといった観光資源があるわけではありませんでした。戦後しばらくは、冬の寒さを生かした凍豆腐(高野豆腐)づくりが盛んでしたが、工場生産が主流になると、まもなく衰退してしまいました。入れ替わって町を支えてきたのは播州織でした。しかし、こちらも1980年代前半をピークに下降線をたどりました。八千代の農家は、常に時代の波をかぶり続けてきました。
「なんとか町を活性化させたい」。そんな思いを受けて、ここに「クラインガルテン」が誕生したのは93年春、全国で初めてのことでした。
谷に沿って開かれた田畑は大規模な農業には不向きでも、里山に連なる自然はかけがえのないものです。それを都会の人たちに開放したのです。
 現在、八千代区には、「フロイデン八千代」「ブライベンオオヤ」「ブルーメンやまと」という3つのクラインガルテンがあります。合計110棟のコテージはすべて埋まり、約130世帯が予約待ちという人気です。
利用者の平均年齢は60歳強。阪神地区から通う人が大半です。八千代までは大阪から75キロ、神戸からは50キロほどですが、高速道路を利用すれば、1時間半から2時間。わずかな時間で自然豊かな土地に行けるのです。


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