2.我が国の排出権取引制度


政府与党は地球温暖化対策基本法案に盛り込んで、排出権取引制度の本格導入を目指していましたが、先の通常国会で廃案となり、今後の成立の見通しも不透明な状況となりましたが、2010年9月3日、関係閣僚が意見を交わし、法案の内容を変えずに次の臨時国会に再び提出することをおおむね了承したとNHK ニュースで報道されました。

こうした動きに先駆けて、東京都は2010年度からいち早く導入に踏み切り、その実施要領は制度設計のモデルケースとして注目を集めています。さらに埼玉県も2011年度から同制度の導入を決めています。 環境省が検討を進めている温暖化ガス25%の削減方法については、どのような手法で削減するのでしょうか。専門家筋では、25%のうち国内対策(真水)分は15%で行う案が有力になっているようです。 環境省は「真水のウエイトについては15%から25%の間で検討する」との見解ですが、関係筋によると15%が落としどころだという見方が有力になっており、仮に真水が15%になった場合、残り10%は排出量取引制度などで検討することになるのではと、専門家らは推察しています。


東京都の排出量取引制度導入の概要

東京都は、2010年4月1日から排出量取引制度導入をスタートさせました。これは日本初のキャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度であり、世界では3番目の本格的なキャップ・アンド・トレードです。
 世界初は、2005年の欧州排出量取引制度「EU-ETS」、続いて、2009年に開始した米国の北東部10州の「地球温暖化ガスイニシアチブ(RGGI)」です。
東京都は、2008年6月に都の環境確保条例を改正して施行しています。大規模事業所ごとにCO2(二酸化炭素)排出量の総量削減の義務を課し、未達分は排出枠を事業所間で取引する。それでも目標を達成できない事業所には、厳しい罰則が待ち受けています。都内の約1400の事業所が対象になるそうです。
 一般的に、温暖化ガスの排出削減が進む工場(産業部門)に比べ、オフィス(業務部門)の対策は進んでおりません。本社機能が集中する東京では、オフィスビルでの対策を進めることにより排出量を削減しようというのが、東京都が新制度を導入する理由です。


2015年度に未達なら罰金
 東京都内で一定規模以上の建物や施設(大規模事業所)は、燃料や熱、電気の使用に伴うCO2を、今後5年間でオフィスなら平均8%、工場は平均6%を総量で削減する義務を負います。
事業所ごとに定める基準排出量がキャップ(CO2排出量の上限)。目標とする排出量を上回った分は、排出枠の購入で補填。目標以上に削減できれば、その分の排出枠を売却できることになります。
枠の取引は2011年度から行われ、最終的に2014年度末に目標を達成していればよいことになりますが、もし目標を達成できない場合には、罰則が科せられます。
罰則は、2015年度中に未達成分の1.3倍の排出枠を購入すること。
それができないなら、違反事実を公表し、罰金50万円を科したうえ、都知事が取引を代行して、違反企業に費用を請求するというのです。


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