東日本大震災応援メッセージ(安田喜憲氏)


今こそ都市と農山漁村の共生・対流を促進しよう

都市と農山漁村の共生・対流推進会議 副代表 安田 喜憲 氏
(国際日本文化研究センター教授)


 「物質エネルギー文明から生命文明の時代へ」と私が主張している文明史の趨勢(すうせい)はおそらく正しいであろう。近代ヨーロッパにはじまる物質エネルギー文明は人類に繁栄と豊かさをもたらした。原子力はその物質エネルギー文明のシンボルだった。しかしその物質エネルギー文明はルネ・デカルトやロジャー・ベーコンに代表される自然を機械とみなし、自然を支配し搾取することで、人間のみの王国をつくろうという人間中心主義の哲学に立脚していた。
 さらに自然を搾取することになんらの倫理的規範をともなわない、市場原理主義と金融資本主義が、物質エネルギー文明の指導原理として導入されたとき、物質エネルギー文明は人類史をリードする文明原理ではなくなった。それが今回の福島原子力発電所の事故として端的に表れてきたのである。我々はいま人間存在の原点に立ち返り、生命ある地球、命満ち溢れる地球に、なぜ人間は生きるのかを根底から問い直さなくてはならないときにたちいたっている。
 物質エネルギー文明の下では、お金がもっとも輝いた。しかし生命文明の下では、生きとし生けるものの生命が輝く。お金よりも何よりも生命が輝く生命文明の時代を構築しなければならない。そうしなければ、地球上の生きとし生けるものも人類もすべて滅ぶ。
 その生命文明の時代を構築できるのは、世界の誰よりも気高い心根をもった日本人の子供達しかいない。
人間だけではない、生きとし生けるものとともに生きることに最大の価値を置き、慈悲の心・利他の心を持ち続け、人と人が信頼できる文明を構築してきた日本人だけが、生命文明の時代を構築できるのである。だから東日本大震災と原発事故は「生命文明の時代に向かえ!」という天の声であると私は思う。
 オーライ!ニッポンでは未来を担う子供たちに、生きとし生けるものの命の大切さを実感してもらうために、都市と農村の交流事業を推進している。未来を作るのは子供たちである。この東日本大震災でも多くの子供たちの命が奪われた。それでも避難所で未来に希望を託せるのは、子供たちの明るい笑い声である。この子供たちの未来のためにはどんなことでも大人はしなければならない。今こそ都市と農山漁村の共生・対流を促進し、この未来を託す子供たちに、日本の自然の美しさと、生きとし生けるものの命の輝きにふれさせ、生命文明を担う騎士として育てることが重要である。