第5回(平成19年度)オーライ!ニッポン大賞
ライフスタイル賞


中野渡 利彦(青森県十和田市)


 平成4年に満50歳を機に、残りの人生を馬と共に歩むことを決意し、十和田市内で5頭の南部馬を飼い始めた事をきっかけに、乗馬を中心としたグリーン・ツーリズム活動に着手。平成5年に乗馬クラブを立ち上げ、平成7年には乗馬指導者の資格を取得し、乗馬セラピーなど福祉的な乗馬を実践するNPO法人驥北会を設立。平成6年には障害者の乗馬サークルを設立し、自然の中で馬との触れあいを楽しむ機会を提供。また農村女性乗馬塾では、地元のグリーン・ツーリズムに積極的な農家女性達と、自家製有機野菜を使った野外料理と乗馬を組み合わせた体験プランを作り、相互に協力してファームステイを受け入れている。
 平成17年度には、遊休地や森林を所有する地元住民と、環境保全活動に意欲的な都市住民を結ぶ「いのちのふるさと里山の森を守る会」を設立、東京にふるさと応援隊が発足し、乗馬を交えた里山保全に取り組んでいる。
 また平成18年度には集落共同の林間牧場を開設するなど、馬を軸に地域と都市を結ぶ事業を立ち上げ、その事業展開は地域へ溶け込んでおり、地域の活性化のみならず、福祉、環境保全等幅広い貢献度が高い点が評価された。



梶 さち子(長野県泰阜村)


 都内幼稚園勤務を経て、1986年に山村留学「だいだらぼっち」立ち上げのため、泰阜村に移住。農家を借りて山村留学を開始し、1987年には留学施設を建設。2001年にNPO法人格を取得するなど、移住後23年間、子ども達と共に一つ屋根の下で、手作りの田舎暮らしを営んでいる。今では山村留学の卒業生は300人を超えている。
 山村留学開始当時は、強い地元の反発もあったが、村の行事や結い作業、学校行事には必ず参加し地域への理解を深めていき、地域住民との対話を通して、泰阜の風習(暮らしの技術や知恵、やってはいけないこと)を教わり、地域のマナーに反する行動を行わないように、こども達の活動に反映。また毎年4月には、山村留学生と一緒に欠かさず集落を挨拶して回り、秋の「だいだらぼっちのお祭り」には村人も招待し、子ども達や保護者と村人が交流する機会を設けるなどの積み重ねにより、十数年の年月を経て地域への理解をさらに広げていった。
 その結果、山村留学の卒業生が毎年数多く泰阜村に訪れ、その中には定住する若者まで出てきている。現在では、村の人口に匹敵する2,000人以上が自然体験を目的に訪れるなど、山村の交流人口増加に大きく貢献している点が評価された。



金木 美智子(富山県立山町)


 富山県立中央病院の内科医として勤務した時代に、和漢薬による治療法を学び、平成4年に出身地である立山町に西洋医学と東洋医学を組み合わせた治療を施すクリニックを開院。
 近年、和漢薬原料となる日本産の薬草が栽培されなくなったことに危機感を感じ、対応策を思案していたところ、富山県のグリーン・ツーリズム重点地域である「立山町東谷地区」が薬用植物栽培に適した環境であること、また過疎化による耕作放棄田(棚田)を有効に活用できる事に着目し、自らが立山町グリーン・ツーリズム推進協議会の委員となり、薬用植物栽培を活用し、都市住民との交流メニューの一つとして捉える事となった。
 栽培を試みている薬用植物は「当帰(とうき)」という漢方薬の代表的な生薬の一つで、中山間地での栽培が容易で、かつ国内産生薬が不足していることから、「新たな農家収入」の可能性があるとして地域住民の栽培意欲も向上している。
 また医師の立場から、農村滞在における免疫の向上等の講演を行う事で、過疎地域の住民に地域の誇りや地域資源の再認識にも協力している。
 最近では、立山町はクマの出没が深刻化している中で、人と動物が共生する里山を再現しようと、「どんぐりころりん会」を立ち上げ、豊かな森づくりに挑戦するなど、自身の知識を最大限にいかしながら、地域活動に精力的に取り組んでいる点が評価された。



大西 かおり(三重県大台町)


 大学卒業後、約3年間青年海外協力隊としてフィリピンで理数科教師として働き、平成10年に帰国後、高校の非常勤講師、常勤講師を務めながらも、自分の生まれた故郷に帰って生活がしたいと考え、平成12年から1年間、北海道黒松内にあるぶなの森自然学校において、(社)日本環境教育フォーラム自然学校指導者養成講座を受講。平成13年に、町や地域の人々の協力のもと、日本の地域社会に残された循環型社会へのヒントを環境教育に取り込み、新たな持続可能な社会の創造に寄与する事を目的に、NPO法人大杉谷自然学校を設立。自らが住む場所に仕事場をつくり、念願の故郷での生活をスタートさせる。
 地域社会の自然や生活のルールを重んじた自然教育活動を実践しながら、1~2年間田舎の暮らしを体験する「実習生制度」や「ボランティア制度」などを設けて、地域と都市部との交流促進に励む一方、自宅での薪風呂や祖父の畑仕事の手伝い、地域ぐるみでの葬儀や草刈等の行事に参加するなど、地域特有のライフスタイルを楽しんでいる。
 自然学校は経済活動の場、地域社会は生活の場として、地域における経済的自立と、今体験しないと失われてしまうだろう農村での暮らしの両立を目指しており、このようなライフスタイルの確立は、今後、農山漁村へ住んでみたいという若い世代へのよき見本となる活動であると評価された。