第7回むらの伝統文化顕彰
むらの伝統文化顕彰審査委員会 特別賞


「くず繭が紡ぐ「真綿夢」、耕野シルクロード拓け」
耕野身しごとの会(宮城県伊具郡丸森町)


■ 活動の概要
丸森町の北西に位置する耕野地区は、人口1000人も満たない小さな村落で、伊達藩政時代から養蚕が盛んに行われてきた地域である。幕末になって開港すると、絹糸は日本最大の輸出品となり、明治時代にはいると、外資獲得と大凶作の救済を目的に桑畑造成と植桑が奨励された事もあり、丸森地方はますます養蚕が発展し、県内有数の産地となった。耕野地区にも、工場や共同稚蚕飼育所が置かれていた。昭和40年のピーク時には、全戸が養蚕を営むなど、養蚕の里であった歴史がある。
 しかし時代と生活の変化で、養蚕は衰退の一途を辿り、県内のほとんどの養蚕農家が姿を消す中で、耕野には、40~50代を核に6軒の現役養蚕農家が残っているだけとなった。
 耕野身しごとの会は、新しいこの地の自然や生活になじみながら、受け継ぐ技術や文化を生活に活かし、心豊かに生きて生きたいとする若い世代のIターン者が、養蚕に興味をもち、地域の生活を支えてきた生業としての養蚕の技術を伝承しようと会を発足。昭和30年代まで地元の女性達が、出荷ではねられたクズ繭で真綿をひき、手紡ぎされ、手織機で織っていた技術を習得し、商品開発まで展開、県外業者から声がかかるなど、注目を集めている。
 またこの活動に刺激を受け、生家の養蚕を復活させたい後継者も現れ、講習会を開催すると県内外からの参加者がある。最近では、町内に従来からあった織のグループとの連携も深まり、仙台や福島でイベントを開くなど、活動の幅を広げている。

■ 講評(評価のポイント)
若いIターン者が地域のかつて生業を掘り起こし、ただ同然だったクズ繭に価値をつけ、糸を紡ぎ、商品開発をして、地域全体のPRにまで繋がっている。女性を中心とした等身大の技術に着目している点も、女性起業家を目指す人々への参考にもなる。既存資源を活用した小さな起業は、他地域への教訓にもなるという点を評価した。



「高千穂の夜神楽の継承」
五ヶ村村おこしグループ(宮崎県西臼杵郡高千穂町)


■ 活動の概要
 高千穂の夜神楽は、その年の豊かな実りに感謝し、来る年の無事を祈る「村まつり」で、11月下旬から翌年の2月上旬まで町内のおよそ20集落で行われている。
 夜神楽は平安時代末期から鎌倉時代にかけて成立したものとされ、800年にも渡り伝承される高千穂地方独特のもので、夜神楽を今日まで伝承出来ているのも「高千穂は天孫降臨の地、日本の神話のふるさとである」という事を村人が信じてきたことにある。
 夜神楽は、鎮守の森の氏神様を民家に招き、前日の夕方から翌日の昼頃まで、およそ33番の夜神楽の奉納を行うことが今も受け継がれている。
 五ヶ村村おこしグループは、平成6年に天岩戸温泉の開業に合わせ地域の活性化を行う目的で、有志9名とその家族で結成。平成8年頃、集落内で夜神楽の存続が問題になり、神楽をやめて神事だけを残す話も出た際、村おこしメンバーが中心となり、神楽の存続に取り組んだ。夜神楽の舞台となる神楽宿は、隣町の日之影町から築130年の民家を譲り受け、約4年の歳月をかけて解体・移築を行い、そこを拠点に夜神楽を復活した。その後、民宿事業も開業し、地産地消の料理でもてなしている。平成13年度からは、地元国民宿舎と夜神楽体験ツアーや刈千切り体験ツアーを年間10回程度開催するなど都市農村交流に繋がっている。現在は夜神楽保存会ができ、本来1回しか舞わない神楽が、夜神楽体験ツアーのお陰で10回以上舞う機会ができ、それが後継者育成にも繋がっている。

■ 講評(評価のポイント)
 九州を代表する高千穂の夜神楽の継承を基礎に、各種体験ツアーや民宿の運営、地元の食文化の提供、体験プログラムの開発などへ広がり、経済的活動にも繋がっている。
また夜神楽体験ツアーを行う事が後継者を育成することになっている。神楽の伝承の重要性は、いうまでもないが、それにあわせて、交流や経済活動による地域の活性化をめざしている点を評価した。



「脇本山田楽」
阿久根市立脇本小学校山田楽保存会(鹿児島県阿久根市)


■ 活動の概要
 「山田楽」は、今を遡ること400年ほど前、当時、島津家の家臣だった出水郷の地頭「山田昌厳」が考案し、関ヶ原の戦いに出陣する際、互いの士気を高めると共に、勝利を祈願して奉納した鉦と太鼓による勇壮華麗な踊りで、この山田昌厳の名をとって「山田楽」と命名されたと伝えられている。
 当時から出水地方で、夏祭り等で盛んに踊られて奉納され、時には雨乞い儀式の際にも踊られており、若者を中心とする踊り手は、楽の質を高めようと大いに切磋琢磨していた。
しかし、時代と共に伝統の継承に対する意識が薄れ、次第に衰退し、現在では3集落に残っているだけである。
 阿久根市立脇本小学校山田楽保存会は、「山田楽」を何とか復活させ、伝承・保存したいという校区民の強い願いにより、昭和59年以来、毎年、小学5年生が伝承するようになったもので、指導者の熱意と校区民の絶大な理解と協力により、今年で24年目を迎えている。当初は6年生の活動を望む声もあったが、先輩が後輩を指導し、後輩は先輩の教えに正しく学ぶという、薩摩の「郷中教育」の精神も併せて身につけさせたいという願いから、5年生の伝承という形が取られている。
 毎年7月に6年生から5年生へ伝承する伝承式が行われて、10月には「山田楽打ちならし」を行い、神社へ奉納。秋季大運動会では、保護者・地域の方々へ踊りを披露している。伝承20年を超え、当時の児童が保護者となり、その子どもがまた山田楽を行う事で、後継者育成にも繋がっている。

■ 講評(評価のポイント)
学校教育の中にしっかりと地域の伝統文化を継承することを位置づけている。5年生への伝承という工夫をすることにより、20年を超えて継続して取り組んでいることで、地域への愛着や地域内の繋がりも深く、将来の担い手育成にも繋がっている点を評価した。