オーライ!ニッポン大賞 グランプリ(内閣総理大臣賞)


大地の芸術祭実行委員会

新潟県十日町市・津南町

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 日本有数の山間地域の豪雪地帯である、新潟県越後妻有地方では、平成8年に新潟県が始めた、県内広域行政圏が独自の価値の発信により、地域づくりに取り組むことを目指す「ニューにいがた里創プラン」をきっかけに、地域に内在する地域資源をアートを媒体として世界に発信し、10年かけて地域再生の道筋を築く事を目標に、「越後妻有アートネックレス整備事業」を展開。その成果の発表の場として、3年ごとに、里山や空き家等を舞台に世界のアーティスト、文化人、都市のサポーターなどと地域住民が協働で現代アートを制作し展示する「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」を開催している。
 この事業は、世界でも類をみないアートによる地域づくりであり、「妻有方式」として国内外で多くのメディアで紹介され、個人アーティストに留まらず、世界各国の文化芸術機関が参加して、アートプロジェクトやワークショップを開催している。アーティストが里山を舞台に作品を制作するには、地元住民とのコミュニケーションが必須であることから、年々、相互の理解が深まり、地域住民がアーティストの作品作りに協力するまでに交流が浸透している。中でも、イギリスのグライスデール・アーツは、7人のアーティストを送り、星峠集落の活性化プロジェクトを行うべく1ヶ月間以上にわたり滞在し、その成果をリバプール・ビエンナーレで発表。後に星峠集落の住民がグライスデールに招かれ、農業指導や料理のワークショップを行うなど、交流が継続している。
 また、大地の芸術祭の開催には、自らを「こへび隊」と名乗る多くの都会の若者のボランティアが参加し、様々な活動に関わっている。平成16年に発生した中越大地震や豪雪被害では、アーティストや都市のサポーター達が駆けつけ、復興支援を行うなど、アート以外の交流にも繋がっている。
 平成20年に、大地の芸術祭を持続的に発展させるため、「大地の芸術祭」事業の自立を目指すとともに、地域活性化のための企画・コーディネートを担う、NPO法人越後妻有里山協働機構を設立。また地元の主婦が、地元食材にこだわった食事を提供する「うぶすなの家」レストランの開業、廃校を活用したコミュニティ施設「三省ハウス」の誕生、里親による資金援助や農繁期のサポートで棚田を保全する「棚田バンク」の実施、地域内の小・中学校や、地域の個性を生かした交流拠点施設(里山科学館「キョロロ」、総合文化施設「農舞台」、越後妻有交流館「キナーレ」)、公民館が相互に協力しあい、生業・雪掘り体験などの体験プログラムを開発する「里山体験プログラム」の実施、こへび隊が集落内に常設する約200のアートをガイドする里山アート観光など活動を広げている。
 平成12年第1回開催時は16万人だった来場者数も、平成21年第4回開催では、37万5千人に増加、作品展示集落も28集落から92集落に増加、40カ国約350組のアーティストが参加するなどで、世界規模で人々を惹きつけ、地域活性化、芸術、国際交流など多様な要素による、地域の資源を有効に活用した独自の地域づくりが評価された。