第5回(平成19年度)オーライ!ニッポン大賞


特定非営利活動法人 えがおつなげて(山梨県北杜市)


 特定非営利活動法人えがおつなげては、山梨県北杜市須玉町増富地区に活動拠点をおき、構造改革特区「増富地域交流振興特区」の認定のもと、地域と多様な組織と連携し、都市農村交流プログラムにもとづく多面的な事業を展開している。
 平成15年当時の増富地区は耕作放棄地62.3%、高齢化率58.4%で、集落の維持が困難になりつつある状況であったが、構造改革特区の指定をきっかけに、地域資源を有効に活用した持続可能な農村地域社会を再生し、地域活性化につなげていこうと、本NPOが遊休農地約3haを賃借。都市部からの農村ボランティア等の参加者も含めて7500人が、農地の開墾や農業体験、農村活性化のためのワークショップなどに参加している。
 このような取り組みは農山漁村のみならず都市における社会問題のバランス是正に有効な手法と考え、山梨、東京、神奈川、埼玉、千葉などのメンバーが8つの委員会を構成し、温泉施設の運営、バイオマス推進、森林資源の活用、箱善による食育事業、都市農村交流会等、各委員会がそれぞれ地域開発事業を展開している。その他、大学や企業とのパートナーシップも進め、都市のオーガニックスーパーが参加する共同農場運営(トウモロコシ1万本産直農場)や企業のCSR活動の受入(遊休農地の開墾活動)、東京農工大学との地域にあった小水力発電なども進めている。更に2008年夏からは関東1都10県にまたがるネットワークで関東ツーリズム大学開校に向けて準備を進めている。
 本NPOの活動は、行政、大学、企業など多様な主体と連携し、持続可能な農村地域開発事業に取り組み、一定の成果を上げている。また、活動拠点での事業活動を踏まえて、より広範囲での事業展開を行うほか、都市との交流による地域の活性化や、地域再生に関わる人材育成まで目指している点などが評価された。



社団法人若狭三方五湖観光協会(福井県若狭町)


 若狭町は平成17年3月の合併により誕生した町で、福井県南西部に位置し、若狭湾を始めラムサール条約に登録された「三方五湖」や「三十三間山」、名水百選に選ばれた「瓜割の滝」、中世以来の宿場町である「熊川宿」など、豊かな海・湖・里の資源に恵まれた地域である。
 若狭三方五湖観光協会では、平成元年に岐阜県内の中学校から要望のあった大敷網見学を旧三方町で受け入れた事をきっかけに、豊かな資源を活用した体験型観光事業に着手。県外中学生などを対象として、5~7月の間に1泊2日あるいは2泊3日の行程で行う「海の体験学習(定置網見学、釣り、干物作りなど)」は、若狭町常神半島4地区の漁村民宿に宿泊して行われ、平成19年度は44校5400人が訪れるなど、閑散期の漁村民宿の活性化に大きな役割を果たしている。
 平成19年度から個人客を対象に、「若狭・三方五湖 まるかじりツーリズム」を本格始動させている。地元の湖・海・里の幸を自分で取って自分で食べる「自捕自食ツアー」や、語り部が若狭の文化を語りつつ、目の前で取れた湖・海・里の幸を「前代未聞」に食べる「若狭人なりきりツアー」など、これまでの経験を活かし、他地域にはない体験プログラムを作成している。
 県外中学生の漁業体験学習を取り入れた教育旅行の受け入れを契機に、沈滞気味だった漁村民宿の活性化を図り、さらに地域の豊かな海・湖・里の資源を活用した個人客を含む、観光受入体制を創意工夫により整えている。
 またこれまでは地元漁師(民宿経営者)が活動の中心を担ってきたが、事業展開を図る上で必要な企画・運営にかかわる人材のネットワーク化をすすめ、地域特性にもとづく体験プログラムを新たに創出し、観光事業の発展を支えている点が評価された。



伊座利(いざり)の未来を考える推進協議会(徳島県美波町)


 伊座利地区は、徳島県南東部に位置する美波町の東端に位置し、入り組んだ海岸線と三方を山に囲まれた小さな漁村集落である。かつては多くの人々が住んでいた伊座利も、過疎と少子・高齢化により人口が100人を落ち込み、人口減とともに、子どもの数も激減し、伊座利小学校、由岐中学校伊座利分校(通称:伊座利校)の統廃合が話題となった。
 その際、地区のシンボルである学校が無くなると集落存亡にかかわると、地域住民の中で危機感が高まり、「学校の灯火を消すな!」を合い言葉に、伊座利校の存続を掲げて、住民が一体となって自主的・創造的な地域おこしに立ち上がり、草の根的なむらづくり活動を開始している。
 最初に手がけた漁村留学交流イベント「おいでよ海の学校へ」を契機に、地域の活性化と持続的な発展を推進するため、平成12年に、子どもからお年寄りまでの全住民で構成する「伊座利の未来を考える推進協議会」を結成。東京、大阪、徳島市内などでのPR活動や地域資源を題材にした体験活動、休業中のキャンプ場の再生復活など、多彩な交流促進活動に積極的に取り組み、交流の輪は大きく広がり、関西や首都圏、徳島市在住者を中心に構成する「伊座利の未来を考える応援団員」は1000名にのぼる。
 また伊座利の自然を守り、ブランド化を図るために、「ゴミ・タバコなどののポイ捨てはやめよう」という独自の規定を設け、海岸や川・道路の清掃を全住民で行っている。
 これらの結果、活動当初約100人だった人口が、現在約130人に増加。13年ぶりに赤ちゃんが誕生したほか、若者の定住、児童生徒数の増加、漁師の女性が運営する「イザリcafé」の開業などに結びつくなど、地域に活気と賑わいが戻ってきている。
 ま集落存亡の危機を地域住民が一体となり、都市の児童生徒の漁村留学の受け入れや、地域外の応援団を組織することで、集落再生の展望を切り開いている。またそれらを契機に、地域の自然環境保全、さらには女性起業によるコミュニティ・ビジネスおこしに繋がっているなど、波及効果が現れている点が評価された。