トップページ > 事例情報 > 埼玉県神川町(旧神泉村)
連携事業の概要
○ 昭和48年度に21,643㎡が農村工業導入地区に計画設定され、昭和62年に神泉村直営の農産加工センター(敷地面積:4,554㎡)を建設。地元農産品の高付加価値化に向け、こんにゃく、山菜加工品、各種ジャム等の製造を開始した。その際、販売に協力してくれたのが、当時本庄市に本社があったヤマキ醸造(株)だった。
○ その後、ヤマキ醸造(株)は、神泉村の自然水を利用した豆腐の開発を検討。それまでに構築された企業と行政の信頼関係も追い風となり、平成3年豆腐工場を誘致することとなる。
○ 平成6年には、本社も神泉村に移転される(自然水の生産、味噌・醤油工場も建設)。
地域概要
○ 埼玉県の西北部にあり、埼玉県と群馬県の境を流れる神流川の右岸に位置する。東京から80km圏に位置し、森と渓流に囲まれた自然豊かな山村である。利根川の支流である神流川には、首都圏の水瓶である下久保ダム(神流湖)がある。
○ 平成18年、旧神川町と合併し、神川町となる。
○ 過疎対策事業を中心に観光を手段として村づくりを進め、自然の中での余暇活動や創作活動、良質の水を生かした農業や自然食品づくりなど、環境と資源を生かした村づくりを積極的に推進してきた。
○ 冬桜で有名な城峯公園やフィッシングパーク、鳥羽川公園などが整い、年間を通して自然を楽しむビジターが訪れている。さらに、山の緑を写す巨大な鏡である神流湖畔には地元産の檜を利用した「冬桜の宿 神泉」がある。
農業と連携を図っている工業の概要
○ 当時、ヤマキ醸造(株)は本庄市を拠点に事業展開をしていたが、常々「自然の中で自然のものづくり」を進めていきたいと考えていたところに、東京の百貨店の特産品イベントで、神泉村職員(特産品販売人員として同行していた産業観光課長)と出会う。
○ ヤマキ醸造(株)は、美味しい水、旨い空気といった環境の中で、伝統的なこだわりの製法よる味噌・醤油づくりを追求していたが、工場のある本庄市ではこの環境を手に入れることはできない。しかし、近隣の神泉村にはそれがあったことから、工場立地を検討する。
○ 第1期工事(平成2〜3年)豆腐工場「豆庵」建設、第2期工事(平成5〜6年)味噌・醤油工場建設、第3期工事(平成6〜7年)駐車場・庭園建設。
○ 総事業費1,349,383千円。敷地面積13,104㎡。工場延床面積4,714.55㎡。
○ 現在は、各種製造品販売事業を行う「(株)ヤマキ」を中心に、味噌・醤油・漬物を製造する「ヤマキ醸造(株)」、豆腐関連商品を製造する「(有)豆庵」、神泉水を管理・製造する「(株)トミミツ」、無農薬有機農法農産物の生産を行う「農業生産法人(有)豆太郎」、豆腐と旬菜の創作料理を出す「豆腐会席 紫水庵」といった6つの組織による「ヤマキグループ」を形成し、事業を展開している。
○ ヤマキ醸造では、約40名弱、豆庵では20名の従業員が働いている(パート含む)。
○ 豆太郎では、有機栽培生産者の自然農法で45年以上の実績を持つ須賀一男氏の指導のもと、自家採取した種にこだわり、「安全」で、しかも「栄養価の高い」美味しい大豆等を生産している。山の循環と同じように、自然の生態系をそのまま維持することに努め、動物系肥料などは与えない。大豆を栽培するのであればオカラを肥料にするなど徹底することで、通常不可能な大豆の連作も可能となる。
○ 紫水庵では、天皇家の料理を司った四條流師範がもてなす健康本意の創作会席料理を楽しむことができる。1人4,000円のコースを金・土曜日の1日2交代(11:00・13:00)で50名限定だが、ほとんど予約で埋まっている状態である。
地域農業の概要
○ 本村の農業は、養蚕とこんにゃくが特長である。特に、昔ながらの製法によって製造されるこんにゃくは、東京を始め内外からの評価も高い(含水量が少ないため、火を入れても縮むことはなく、こんにゃくステーキなどにも最適)。
○ 各農家は零細であるため、市場対応は難しい。そこで、付加価値創造の製造拠点として立ち上げられたのが農産加工センターである。これにより、安定的に生産することが可能となり、販売ルートも確保できるようになった。
○ 最近では、冬桜ねぎ、きのこ類、タケノコなどの特産品化を図っている。
行政の対応
○ 造成は企業が行ったが、村としても、一部4m道路を整備して協力した。
○ 第2期工事の際には、ふるさと創生資金を無利子で融資する(約2億円)など、資金的な協力も行った。
波及効果
○ 自然食ブームが到来し、食の安全に関心の高い消費者グループや一般観光客も多い(約年間5万人)。バス観光では、ヤマキ製品の販売店、工場見学等が自然食・産業観光の目玉の一つとなっている。その際、村の加工品も購入してくれている。村営宿泊施設への利用客もある。
○ 「農業生産法人(有)豆太郎」では、60町歩の畑で作物が作られ、近所の農家20名が参加している。「農作物を作る人、加工する人、食べる人が一体でないと食文化はできません。食べる人の意見も入れて、食と農の創造、そして安全であること、そこがうちの原点です」とのこと。
○ ヤマキ醸造(株)の仲介をきっかけに、東急コミュニティとの連携による「神泉クラブ」を立ち上げ、会員(160名程度)との交流、地域の情報発信を行っている。
○ 地元雇用もあり(主にパート)、就業機会の増大が図れた。
○ 農産加工センター製品の販売提携や地元農産物を契約出荷するなど地域農業への振興にも好影響を与えている。
○ このように、豆腐等の生産工場がただ立地したというだけではなく、ヤマキグループの水や原料(自然農法の大豆)にこだわった生産・販売・豆腐会席等による集客が、地域農業だけでなく、観光プラスαの効果をあげている事例である。
課題と今後の農業の進め方
○ 農業従事者、加工者の高齢化が大きな課題となっている。
○ 農業従事者の高齢化に伴って、農業規模も縮小。市場対応でなく、自家消費対応での生産活動へシフトしつつある。それを打開するためにも、都市住民と交流を活性化させ、新たな移住者による農業振興が試みられている。
○ 大豆は稲作に比べて、儲からない作物である。今後、大豆の裏作補助も無くなる方向の中で、生産量を確保していくことが大きな課題となっている。
○ 今後、現在の自然食・産業観光をより増幅させていくためには、周辺の河川景観の修復等による「自然食・産業観光として周辺景観と一体となった美しい農村工業団地」のモデルづくりが望まれる。
ヒアリング対象
埼玉県神川町
埼玉県神川町神泉総合支所
ヤマキ醸造株式会社