被災地の「農林漁家民宿おかあさん」に会いに行こう!東北復興応援ツアー in ふくしま

2012.03.31


震災前と変わらない自然と農業が、ここにあります

東北復興応援ツアー< in ふくしま 平成24年3月24日(土)~25日(日) 福島県塙町・鮫川村

 福島県には「農林漁家民宿おかあさん100選」に選ばれた民宿が2軒あります。塙町の「四季彩菜工房」と、会津坂下町の「そばの里」です。いずれの地域も放射線量は非常に低く(注)、東京と変わらないレベルです。しかし、福島県というだけで、農産物が売れなかったり、宿泊客が減るなどの風評被害を受けているそうです。今回は、風評の払拭を目的に、これらの地域には震災前と変わらない暮らしや自然の豊かさがあることを実感していただくため、ツアーを実施いたしました。
なお、「そばの里」は現在、冬季の受入を休止しています。そこで今回は、「四季彩菜工房」を中心に、隣の鮫川村で自然体験活動などを行っているNPO法人あぶくまエヌエスネットと連携してツアーを実施しました。

(注)文部科学省発表のデータによると、塙町役場の空間放射線量は1時間あたり0.099マイクロシーベルト、鮫川村役場で同0.091、会津坂下町役場で同0.130です(いずれも平成24年3月31日午前8時現在)。1日のうち8時間を屋外で過ごすと仮定して年間の被ばく量に換算すると、塙町で0.37ミリシーベルト、鮫川村で0.35ミリシーベルト、0.46ミリシーベルトとなり、いずれも国が定める平常時の年間被ばく限度量の1ミリシーベルトを大きく下回っています。


「子供たちの笑顔と元気を取り戻したい」と活動を再開
NPO法人あぶくまエヌエスネット 代表 進士 徹さん

 朝8時少し前、東京駅八重洲口前を出発。貸切バスでおよそ3時間半、最初の目的地、鮫川村の「WARERA元気倶楽部」に到着。ここはNPOあぶくまエヌエスネットの活動拠点。自然体験や山村留学を長年、実践してきたNPOです。ここで代表の進士さんからお話を伺いました。




進士 徹 さん
進士 徹 さん

 東京の出身で、山村留学などを実践するため鮫川村に移住して今年で17年になります。活動が認められて県や国の事業も受けてきましたが、ようやく経済的にも軌道に乗り始めていた矢先の昨年、東日本大震災が起こりました。

 地震の揺れで建物や体験施設の一部に亀裂が生じるなどの被害もありましたが、私たちの活動は子どもを対象にしているので、福島第一原発の事故の影響はとても深刻です。「そろそろ潮時か」と、活動の休止も考えました。でも、放射能汚染の影響で、福島県内の子どもたちがほとんど一日中、建物の中で過ごすことを強いられているのが気の毒で、「子供たちの笑顔と元気を取り戻すことが自分の使命だ」と考え、活動を再開しました。

 福島県の子どもたちには、せめて学校の長期休暇には、何の心配もいらず、子どもらしく過ごさせてあげたいと、夏休みに北海道で体験プログラムを実施しました。これを皮切りに、冬休みには北海道、神奈川県、愛媛県の3か所で実施し、この春休みも北海道、神奈川県、長野県、岐阜県でプログラムを予定しています。「ふくしまキッズ」と名付けられたこの活動は、多方面からの寄付により支えられています。参加した子供や親御さんから活動の継続を願う声が寄せられています。今後、少なくとも4年間(トータルで5年間)は継続していきたいと思います。この日、同席してくれた北海道の大学生も、中心スタッフとして活躍してくれました。

一方、余震が続き、原発事故の先行きも不透明のなか、遠方に子供を預けることを心配する親御さんもいます。幸いにも、鮫川村は放射線量が低いので、1月から「WARERA元気倶楽部」でも県内の子どもたちの受入を開始しました。「ぽんた山元気楽校」というプログラムで、定員を上回る申し込みがありました。

活動再開の背景には、長年の活動で関わりをもった子どもたちや関係者からの激励のメッセージがありました。この日、同席してくれた高校3年生の女子もその一人。彼女は小学校3年生のときに初めてこの場所を訪れ、「自分も将来はスタッフとして活躍したい」と思い続けてきたそうです。震災後も「ぽんた、大丈夫?」とメールを送ってきてくれました。ぽんたは私の愛称です。この春、無事に進学が決まり、私たちのもとに駆けつけてくれました。活動再開を支える貴重なスタッフとして。

 震災前と、方法は大きく変えざるを得ないけれど、今まで培ってきた人脈を活かして、子供たちの笑顔と元気を応援するという使命を果たしていきたいと思います。

 今回のツアーでは、「元気楽校」と同じ内容で首都圏の子どもや家族連れを対象に募集しましたが、残念ながら応募はありませんでした。この結果だけで判断するのは乱暴ですが、「風評」の一つの現れとも思われますので、今後も注意深く状況を見守っていく必要があると思います。

 「ふくしまキッズ」で、一人でも多くの子どもたちに笑顔が戻りますように、私からも支援を呼びかけさせていただきます。


 大変厳しい状況とは思いますが、進士さんのますますのご活躍をお祈りしています。


ご寄付はこちらから→ 【ふくしまキッズ実行委員会】


お米も野菜も、農薬と化学飼料を一切使っていません。」
「原発事故でお客さん激減。放射線量も低く、自然も農業も震災前と変わらないのに・・・・」

 WARERA元気倶楽部から45分ほどで2つ目の目的地「四季彩菜工房」に到着。吉田優子さんと広明さんご夫妻が出迎えてくれました。ここから1泊2日の農家民宿での田舎体験が始まります。


 さっそく昼食をいただきます。
 玄米餅は、砂糖醤油を付けて甘辛く焼いてあります。表面の香ばしさとパリッとした食感がたまりません。玄米の粒々が残っているので、その食感も楽しいです。
 白菜の漬物、一升漬、葉わさびのおにぎり、手づくりこんにゃく。ほとんどの食材は、吉田さんご夫妻が自分で作ったものだといいます。
 「お米も野菜も、うちでは農薬も化学肥料も一切使わないで作っているんだよ」と広明さん。
 清流がないと栽培できないというわさびも作っていると聞き驚きましたが、石釜の小屋の裏に流れる清流の脇でわさびを栽培しているのを確認できました。
 食後にいただいた「ごぼう茶」と「玄米コーヒー」も自家製です。「東京で販売すると、好評なんですよ」と広明さん。





 食事のあと、優子さんと広明さんからお話を伺いました。

 もともと農家の跡取りですが、私(広明さん)は貿易や流通関係の仕事をし、農地は他の農家に貸していました。その農家が高齢で続けられなくなってしまい、他の引き受け手も見つからなかったのですが、ちょうど米の流通が自由化された時期だったので、ある意味でチャンスだと考え、自分自身で米を作る決意をしました。
 農薬や化学肥料を使わないことにこだわり、そのため農地にミネラル分を補給したり、大きな苗をつくってから田植えをしたり、田んぼに張る水を深くしたり、紙マルチ栽培を取り入れるなどの工夫をしています。農薬など無かった江戸時代の農法から学ぶことも多いですよ。
 その後、国の規制緩和と県の支援策を利用して、農家民宿を開業しました。もともと、農業研修生の受入をしていたので慣れていたし、人と会話するのが好きなので。
 3年ほど前から、東京・青山のファーマーズマーケット@国連大学前に出店し、米や加工品の産直や、民宿の宿泊を伸ばしていきました。
 原発事故後はお客さんが激減しました。自分たちも食べる米ですから、検査機関に放射能検査を依頼しました。結果はND(不検出)でした。その検査機関は1キログラム当たり1ベクレルまで検出できる、国内でも最も厳しい検査機関の一つだから安心です。また、ガイガーカウンターを買って自宅や農地の空間放射線量を確認したり、様々なデータを収集して、この場所の放射線量が低いということをお客様に伝えました。福島というだけで敬遠されるお客さまもいらっしゃいます。でも、説明すればご理解いただけるお客さまもいらっしゃいます。少しづつ、産直のお客さまは回復しつつあります。でも、宿泊のお客様はなかなか回復しません。放射線量も低いし、自然も農業も暮らしも、震災前とまったく変わりがないのに。ぜひ、多くの皆さんに遊びにきていただき、地域の現状を知っていただけたらと思っています。


四季折々の農業体験。汗をかいたら近くの温泉へGo!
家庭料理のフルコース。「食材はもちろん、食後の玄米コーヒーとごぼう茶も自家製です」
自慢のオーディオセットで音楽鑑賞。深夜まで楽しくも真面目な語らい

 四季折々の農業体験。汗をかいたら近くの温泉へGo!
 家庭料理のフルコース。「食材はもちろん、食後の玄米コーヒーとごぼう茶も自家製です」
 自慢のオーディオセットで音楽鑑賞。深夜まで楽しくも真面目な語らい
 お茶で一服した後は、農業体験。育苗ハウスの中で野菜のタネ播きを行いました。土を敷き詰めたトレイに、スィートコーン、さやえんどう、レタス、サラダ菜、ブロッコリー等のタネを播きました。レタスのタネはとても小さいので神経をつかいます。無事に発芽してくれますように。
続いて、馬鈴薯の植付の準備として種イモを2つに切りました。2つに切った両方に、芽が2つ残るような塩梅で切断面を見定めます。植えた後に腐らないようにするため、2~3日、乾燥させてから植え付けるということです。こちらも無事に育つといいですね。




 畑仕事のあとは公営の温泉浴施設「湯遊ランドはなわ」で汗を流しました。実は、東日本大震災の影響で温泉が出なくなってしまい、新たに掘削して2月17日から新しい温泉が利用できるようになったばかりとのこと。「新しい温泉のほうが泉質が良いみたい」と広明さん。アルカリ泉でお肌がすべすべになりました。

 夕飯は、農家の家庭料理のフルコースです。
 煮物ときんぴらは、吉田さん家の野菜がいっぱい。山いもは海苔の風味が食欲をそそります。
 冷奴には自家製の一升漬が良く合います。一升漬の原料の唐辛子と麹も、もちろん自家製です。麹づくりは温度管理と雑菌の排除が欠かせません。手間をかけても麹を自家製にするところに、吉田さんのお米へのこだわりを感じます。
 平飼養鶏の有精卵の茶わん蒸しは、どんぶりで作ったものを小分けにします。「家族が多かったから、うちでは、いつもこうして作ってたの」と優子さん。大切な家族のために作るのと同じ食事をお裾分けしていただく。それが農林漁家民宿の魅力の一つです。
 仕上げはお米のデザート「アロス・コン・レチェ」。お米を牛乳と砂糖で煮て、仕上げにシナモンパウダーとレモンの皮を載せる、スペイン伝統のスィーツです。ここにもお米へのこだわりを感じました。





 夕食の後は、しばし音楽鑑賞。ご自慢の巨大なスピーカーと、真空管アンプのオーディオセットで、クラッシック、ジャズ、その他お気に入りの曲を堪能できます。
 音楽の後は夜なべ談義です。テーマは放射能のこと、風評被害のこと、ふくしまの将来のことなど。「塙町と鮫川村の放射線量は、東京と同じくらいの低さ。東京から近くて、夏も涼しく、高齢者の方にも暮らしやすいのではないか。」、「自己防衛のためにも知識が必要と感じた」、「福島県にも放射線量が低い地域があることを知らない人も多いのではないか。もっと情報を発信してほしい。」、「原発事故をきっかけに、農林水産業や食品への関心が高まった。原発事故が起きたことは大変厳しく、残念だが、より良い社会に転換する契機にしないと報われないのではないか。」・・・。話が尽きず、深夜まで語り合いました。


田舎体験もりだくさん。パンづくり、石釜でピザ焼き、ニワトリの卵ひろい、犬の散歩?!
「本当は2泊すると、もっと楽しめるよ」 贅沢な田舎時間を満喫

 朝食は、ひじきと大豆の煮もの、こまつなのおひたし、ポテトサラダ、おみそしる。メインは平飼養鶏の有精卵と自然農法の玄米ご飯です。卵の黄身は自然な黄色、白身はしっかりと2段に分かれ、かき混ぜる時に手ごたえを感じます。シンプルだけど絶品の朝食でした。


 朝食のあとは、女性陣はパンづくり。パン生地の中に、あんことレーズン、くるみを詰めてまるめていきます。
 男性陣はピザの石釜の火おこし。吉田さんの石釜はドーム型。熱の回りは良いのだが、ドーム状にレンガを積み上げるのが難しいのだという。よく見ると、レンガの角度も微妙に調整されいます。広明さんご自慢の石釜です。




 石釜に熱が回るまでの間、少し休憩。
 吉田さんの愛犬ロッキーと散策。ロッキーが散歩コースを覚えているので、ロッキーのあとを付いて歩けば、集落を一周して主要スポットを散策できるといいます。
 パイプハウスを利用したニワトリ小屋では、優子さんがエサやりのために近寄ると「ドタドタドタッ!」とニワトリ達がものすごい勢いで駆け寄ってきます。ニワトリたちがエサに夢中になっている空きに、卵を失敬。愛犬ロッキーも近づいてきました。彼女は卵が大好物だとか。優子さんが1個分けてあげると、彼女はそれをくわえて、犬小屋にしまいにいきました。




 石釜に十分に熱がまわったら、ピザを焼きます。小麦粉をこねた生地を手で円盤状にひろげ、その上にトッピングをのせ、1枚づつ石釜で焼きます。高温のため約1分で焼きあがります。ひろげて、トッピングして、焼いて、食べてと、結構忙しいです。  パンも焼きあがりました。あんことくるみ、レーズンが入っています。表面がかりっと香ばしい仕上がりです。おいしいですよ。





 こうして「四季彩菜工房」の1泊2日は、あっという間に過ぎて行きました。「田舎ののんびりと流れる時間の中にも、もりだくさんの体験ができて、とても贅沢な時間でした」とお客様のAさん。そういえば、この2日間、優子さんは食事と体験の準備で大忙しだったので、ゆっくりお話もできませんでした。「本当は2泊してもらえると、もっと楽しんでもらえるんだけど」と広明さん。次回は長期で滞在して、さらに田舎時間を満喫したいですね。


「まめで達者なむらづくり」・・・鮫川村の「手・まめ・館」
大型テントで仮営業開始。いわき市の「道の駅よつくら港」

 お帰りの前にお土産を買っていきましょう。今回は、鮫川村農産物加工・直売所「手・まめ・館」と、いわき市の「道の駅よつくら港」に立ち寄りました。

 「手・まめ・館」は、農産物直売所と加工所、食堂、カフェがセットになった複合施設です。本郷まさ子さんからお話を伺いました。

 鮫川村では昔から大豆が作られていました。高齢化が進むなか、高齢者の皆さんに大豆栽培を通じて元気と健康を手にしていただこうと、「まめで達者なむらづくり」事業を行っています。大豆のまま販売しても利益は出ないので、加工して直売しようと考え、使われなくなった幼稚園の園舎を改修して、この「手・まめ・館」を整備しました。
 大豆の品種は「ふくいぶき」という福島県の奨励品種です。イソブラボンが1.5倍も多く含まれています。加工品は、豆腐、豆乳、味噌といった「定番」に加え、昔ながらの圧搾製法でつくった大豆油も販売しています。もちろん鮫川村産大豆100%使用です。えごまの栽培も増え、「えごま油」などの加工品も人気です。


 直売所には野菜や山菜、果物など、地元でとれた旬の食材も揃っています。手・まめ・館では、毎日放射能のモニタリング検査を行い、基準値内に入ったものだけを販売しているとのこと。これなら消費者の皆さんはもちろん、生産者の皆さんも安心ですね。検査結果は手・まめ・館のwebサイトで公表されていますのでぜひご覧ください。【手・まめ・館のwebサイト】





 続いて立ち寄った「道の駅よつくら港」は、いわき市の北東部にある四倉漁港や四倉港魚市場に隣接して整備された道の駅です。東日本大震災の津波で建物の一部を残して流されてしまいました。1月27日に駐車場に大型テントを設営して仮営業を開始したと伺い、訪問させていただきました。
 道の駅には情報館と交流館(レストランと直売所が併設)があったそうです。交流館は津波で倒壊し、情報館も建物は残っていますが中は流されてしまいました。現在、交流館の再建に向けて工事が進んでいます。
 この日は休日ということもあり、テント内はお客さんで賑わっていました。販売しているのは、地元の農産物や加工品が中心。全国各地からの友好の商品提供も多く販売されていました。ある市民の方にお話を伺うと、「営業が再開してとても嬉しい。少しづつ復興が進んでいるのが実感できる」と喜んでおられました。「でも、地元の魚や水産物が置いてないのはさびしいし、少しショック。いわき市の漁港や魚市場はまだ操業停止しているんだ」とも。1日も早く、漁港としての賑いが戻ることを願ってやみません。
 また、この日は津波被災地から回収されたアルバムや写真、位牌等の持ち主を探すため、それらの展示がされていました。
 テントの外では、ガレキの撤去が少しづつ進んでいるようですが、陸に打ち上げられた漁船が、まだ港に残されたままになっており、長引く復興の道のりを象徴しているようでした。
 最後に、全国の東日本大震災で犠牲になった方々への哀悼の意を表するため、参加者全員が1分間の黙とうをささげました。



農林漁家民宿おかあさん100選とは?

農林漁家民宿とは、農家民宿、林家民宿、漁家民宿の総称です。


農業・林業・漁業を営みながら、民宿にお客様をお泊めして、交流活動や地域活性化に貢献しています。
農林漁家民宿では、お客様に自家製や地元の食材を主体としたお食事をお出しし、わが家の一室や離れの部屋にお泊り頂き、農林漁業や農山漁村の暮らしを体験していただけます。
「農林漁家民宿おかあさん100選」とは、そのなかでもとくに質の高い宿泊・食事・体験等を提供し、自身の民宿経営に成功し、地域活性化に寄与している“農林漁家民宿おかあさん”100人を選定する、農林水産省と国土交通省の認定事業です。
 認定者のご紹介は、「農林漁家民宿おかあさん100選」のホームページからご覧いただけます。
 ぜひ一度、おかあさん100選の宿にお泊りにいらしてください。

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