被災地の「農林漁家民宿おかあさん」に会いに行こう!おかあさんの話を聞く会

2012.03.31


(3)おかあさんの話を聞く会

 3月4日(日)の午後、青山の「こどもの城」で「おかあさんの話を聞く会」を開催しました。
 写真右から、谷地ユワノさん(岩手県久慈市「まめぶの家」)、加藤重子さん(宮城県加美町「花袋・天王」)、吉田優子さん(福島県塙町「四季彩菜工房」)。

主催:
 被災地の農林漁家民宿おかあさん・いわての会
 被災地の農林漁家民宿おかあさん・みやぎの会
 被災地の農林漁家民宿おかあさん・ふくしまの会
(お問い合わせ先)ohrai@kouryu.or.jp



農林漁家民宿の魅力について

司会
 本日は、岩手、宮城、福島の各県から、100選に選ばれた農林漁家民宿のおかあさんたちにお集まりいただきました。東日本大震災では、それぞれにご苦労があったと思いますし、復興に向けた取組みのなかで、新たな課題もあると思います。農山漁村の実情はなかなか伝わりにくいところがありますので、本日は、おかあさんたちから直接、状況を教えていただき、復興に向けて何が求められているのかを考えてみたいと思います。
 まず、農家民宿というものを知らない人も多いと思いますので、はじめに自己紹介を兼ねて、それぞれの農家民宿の特徴をご紹介ください。


ふるさとの郷土食や暮らしを体験

谷地さん
 私が住んでいるところは、久慈市の旧山形村の荷軽部という、100軒くらいの小さな山奥の集落です。お客さんをお迎えすることで元気になりたいと思って、農家民宿を17年間やってきました。調理の仕事に従事してきたので、その経験を活かして、郷土食を作ったり食べたりしていただくことから始めました。あと、林業、炭焼き、農家のありのままの暮らしを体験できるメニューを作って、その中から選んでいただき体験していただくようにしています。
  5年ほど前に村長さんが東京にセールスに出てくださいまして、学校の教育旅行を誘致してくださいまして、お子さんの宿泊や体験を受け入れています。
民宿の名前は「まめぶの家」と言います。当時の村長さんが名づけてくださいました。まめぶというのは、小麦粉を練った生地にくるみと黒砂糖を入れて丸めた、直径2センチくらいの団子のことです。しょうゆ味のお汁に、まめぶとお野菜(ごぼう、にんじん、ぶなしめじ等)、油揚げなどを一緒に煮たものを「まめぶ汁」と言います。まめぶ汁は、旧・山形村に伝わる郷土料理です。


自家製の野菜や食材を中心におもてなし

加藤さん
 私は、宮城県の加美富士という山の麓に住んでいます。もともと専業農家のお母さんで、平成6年に当時の町長さんが農産物直売所を作ってくださり、そこでいろいろな野菜を販売しています。
 その後、町長さんから「旅行の形態が変わり、少人数で癒しを求める旅が主流になる。」と勧められ、海外にグリーン・ツーリズムの勉強に行かせていただくなどして、平成13年に農家民宿を開業しました。不安はありましたが、夫も「良いっちゃー。うちは米も、野菜も、高原大根も作ってるし、(減反で15haのそばを作っているので)我流でそば打ってあげっから」と私の背中を押してくれました。勤めに出ていた娘も「お母さんが民宿やるなら手伝うよ」と言ってくれました。私一人ではできません。家族はとても大事だなと思いました。
 お米や高原大根、そば、豆腐を作ったり、自分なりにできる範囲のお料理でおもてなしをしています。川遊びやそば打ち、野菜の収穫なども体験いただけます。日々勉強させていただいたり、交流を通じてお客様から情報も頂きますし、楽しいです。


自然のありのままの農家の暮らしを体験

吉田さん
 農家民宿は5年前から始めました。農業は始めて10年になります。それまで主人は農業とは関係のない会社を経営していましたが、貸していた田んぼを返されて、「自分で作ろうか」と農業を始めました。無農薬で作ることや、体のことに関心をもって農業をやっているなかで、県からの勧めもあり、農家民宿を始めることにしました。それ以前に若い子が研修に来て泊まることも多く、私自身も抵抗は少なく、自然に始められました。
 マスコミにも取り上げられ、少しづつお客様も増えました。一昨年の夏は、毎日入れ代わり立ち代わりでお客様が来て、本当に忙しかったです。それが、震災後は、ぱったりとお客様が来なくなって、開店休業状態になってしまいました。
 いろいろな人が来てくださり、自然のありのままの農家の状態でも皆さん違和感なく過ごしてもらえるので、農家民宿を始めて良かったと思っています。


司会
 お話を伺うと、農家民宿の特徴として、ご自身が作ったお米や野菜などを使った手料理でもてなしていただいたり、ありのままの農家や農村を体験できることがあげられると思います。その土地でしか食べられない郷土料理も魅力です。
 また、交流を通じて学びや気づきを得られるという点も、お客様と農家民宿のお母さんの双方にとって魅力だと思います。


東日本大震災の被災状況について

司会
 つづいて、東日本大震災では、皆さん、それぞれにご苦労があったと思いますが、被災の状況を教えていただけますでしょうか。


炊き出しに郷土食のまめぶ汁を提供

谷地さん
 おかげさまで私が住んでいる旧・山形村は被害はありませんでした。久慈市の沿岸部は津波にあい、旧・山形村にも避難されて来ました。1か月くらいで避難所は閉鎖され、普通の暮らしに戻りました。
 「まめぶ部屋」という地域おこしの会があるのですが、震災の2日後にイベントを開催する予定で、まめぶ汁300食分を用意していました。イベントが中止になって、沿岸部で食べるものが無くて困っている人がいるということを聞いて、久慈市内を炊き出しに回りました。ある地区で「白いご飯を食べたい」という声を聞いて、まめぶ汁とご飯を一緒に召し上がってもらいました。それがきっかけで、山形村短角牛のカレーライスとまめぶ汁をセットで、岩手県内を回りました。石巻あたりまで、30か所くらい、1万食を提供しました。


被害の大きい沿岸部へ炊き出しなどの応援に

加藤さん
 私のところは山手なのでおかげさまで被害が少なかったのですが、宮城県の沿岸部はとんでもない被害です。石巻には、100選の仲間で、私たちの大先輩である坂下さんがいます。家は残っていますが、1階の中は流されてしまって、畑も水没してしまって、今でもライフラインが復旧していないそうです。それでも、営業再開をしたいということで、避難先から毎日通っていらっしゃいます。ぜひ復旧して頑張ってほしいです。
 私自身は、地震の時は、すごい揺れで心配しましたが、電話は通じました。電気は5日間、来ませんでした。ガスはプロパンガスなので何とか使えました。電気が通らない間は、ガスでご飯を炊けない人もいるので、公民館で炊き出しを行いました。農家は玄米で保存するのですが、電気が無いと精米できず困りました。
 その後、気仙沼の炊き出しに応援に行きました。普段は2時間半で到着する場所に、4時間かかりました。500人分のおにぎりと凍み大根の煮物、春の季節も感じていただきたいと菜の花や青物も混ぜて、持っていきました。暖かいものを食べたいだろうと思い、ガスと鍋を持っていき、温めてお出ししました。避難所では素敵な笑顔もいただきました。避難所では、最初の1か月くらいは、長靴を必要としていました。津波を受けた自宅や周辺を捜して回るために、長靴が必要でした。また、南三陸町は役場の職員も多く犠牲になり、避難所に集まった支援物資の仕分けが出来ませんでしたので、加美町の農家30名くらいで、1週間続けて応援に行きました。浜辺の人たちなので、気持ちはとても元気でした。復興はこれからですが、応援していきたいと思います。


原発事故の発生当時、何が何だか分かりませんでした

吉田さん
 うちは福島県ですが、福島第一原発から70kmくらいの距離にあります。放射能の影響って本当に地域ごとに極端な差があります。あの当時は、何が何だか分かりませんでした。今ふりかえると、ほとんど情報が伝わってきませんでした。
 地震当日も、揺れはひどかったですが、大きな影響もなく、夕方から電気もつき、テレビも見れましたし、生活に影響はありませんでした。その後、うちに以前泊まりに来た外国の人から主人にメールがあって、「80km圏内は避難したほうが良い」と伝えてきたそうですが、地元の人はぴんと来なかったし、どうしたらよいか分かりませんでした。
 いま思い出しても、何日間かは、訳が分からなかったというのが現実です。やがて原発付近の人たちが避難して来て、町内の大きな施設に滞在されました。うちの集落にも避難の方が来るかもしれないから用意しておいてくれと言われて、公民館を使えるように準備したりしました。
 やがて、生活もある程度、落ち着きを取り戻してきましたが、これから将来の福島の状況がどうなるのかなと不安に思っています。


司会
 東京から見ると、お三方とも震災でつらい思いをされていらっしゃると思うのですが、もっと大変な思いをしていらっしゃる人がいると聞いて炊き出しなどの支援に出向いて行かれる。お三方のお話から逆に勇気をいただきましたし、見習いたいと思います。また吉田さんは今もなお、原発事故の風評被害に直面しておられますが、このあと詳しくお伺いしたいと思います。


東日本大震災の被災状況について

司会
 最後に、復興に向けた取組み状況や今後の課題について教えてください。


鉄道も開通。ぜひ遊びに来てください。

谷地さん
 おかげさまで、お客様は去年も普通どおりいらしてくださいました。学校の教育旅行も、去年はキャンセルが2校ありましたが、今年は2校とも来てくださいますので平年どおりです。
 まめぶ汁の炊き出しを通して1万人の皆さんと出会いができ、自分の財産が増えた気がします。ある仮設住宅では、まめぶづくりの講習会みたいなことを3回も開いていただいたと聞き、とても嬉しく思いました。
 三陸鉄道も4月から開通しますので、お客様が乗って訪れて来てくれると良いと思っています。駅の近くに、昼はまめぶ汁、夜はお酒を提供するお店を開店したので、久慈にお越しの際はぜひお立ち寄りください。
 ぜひ、久慈市へ遊びにいただきたいと思います。


沿岸部の被災者の皆さんを、長い目で応援していきたい

加藤さん
  加美町には南三陸町から70名くらい、南相馬市から10名くらいの皆さんが避難しに来られ、廃校を改修した交流センターで受入させていただきました。4月から9月くらいまででした。私たちは、1週間に1回、炊き出しにボランティアに行きました。
 南三陸からの被災者に、グリーン・ツーリズムの勉強にお邪魔したときにお会いした人がおり、交流が深まりました。直売所の5月と8月のイベントにもお越しいただきました。今は地元に戻られて仮設住宅に入っていますが、訪ねて行くと元気が良いのでびっくりします。でも、70戸の集落が何もなくなってしまいました。山の上の仮設住宅に住んでいますが、これからどうなっていくんだろうと、長い目で応援していきたいなと感じています。


普通の生活をしている福島を見て欲しい。

吉田さん
 一昨年はとてもお客さんが多くて忙しかったのですが、震災後は、ぱったりとお客様が来なくなって、開店休業状態になってしまいました。
 風評被害と一言で言っても、難しいなと思います。11月から東京に農産物の直接販売に来ていますが、お客様の反応も様々でした。福島県というだけで拒絶する人もいれば、わざわざ私たちの前に来て「なんで福島のものをここで販売するんだ」という人も。これからまだまだ、将来の見通しがつかない状況なので不安です。
 農家民宿についても、前の年から95%減です。たまに、以前来てくれた人が来てくれたり、福島に何とか目を向けたいという人が来てくれたりします。6月頃から2か月ちかく、アメリカ人の方が、福島の記録映画を作りたいということで長期に滞在し、主人が県内を案内しました。彼の奥さんは日本の方なのですが、3年かけて福島の現状とこれからというテーマで映画にするということです。海外の人たちも関心をもってきてくれていることが嬉しく思いました。
このまま何もしないでいると、どんどん関心が薄れてしまうのではないかと不安に感じます。



震災後は開店休業状態。国民の関心が薄れてしまうのではと不安に。

司会
 吉田さんがお住まいの塙町の空間放射線量は、役場前で毎時0.18マイクロシーベルト(平成24年2月8日発表)です。年間に換算すると0.61ミリシーベルトで(注)、被ばく限度量の年間1ミリシーベルトを大きく下回ります。東京とほとんど変わらないレベルだと思いますが。


吉田さん
 放射線量の数字は、人によって捉え方が違います。うちも自主検査をしてND(不検出)でしたが、NDになる数値も測る機関によってずいぶん違うわけです。消費者は極端な話、1ベクレルでも許せない人もいます。でも、放射線をまったく受けない場所は日本にはありません。普段の自然の状態であっても、放射線を受けています。その辺が非常に難しいです。
 とにかく遊びに来てほしいというのが私たちの想いです。普通の生活をしている福島を見て欲しい。これからのことも考えて欲しいと思っています。



東北へ遊びに行くことが一番の応援。ぜひ農林漁家民宿にもお越しください。

司会
 吉田さん同様に、藤川さん(会津坂下町)と澁谷さん(宮城県加美町)は、自分の作ったお米を自主的に放射能の検査に出して、不検出であることを確認しています。子どもや孫たちが食べるお米なので、安心・安全を確認したいという気持ちが強いと思います。民宿に泊まるお客様にも家族と同じ食材や料理をお出ししますから、どうぞ安心して遊びに来ていただきたいですね。
 震災から1年が経過し、私たちの生活も落ち着きを取り戻してきましたが、被災地の復興は未だこれからです。長い道のりです。多くの皆さんに東北に遊びに来ていただくことが、一番の応援になると思います。ぜひ皆さんも、東北の農林漁家民宿に遊びに来ていただけたらと思います。本日はありがとうございました。




(注)(0.18μSv/時×8時間+0.1μSv/時×16時間)×365日-0.5mSv=0.61mSv
 計算方法は「放射線と健康に関するQ&A」(平成23年9月、塙町)を参考にしました。
 http://www.town.hanawa.fukushima.jp/view.rbz?nd=161&ik=1&pnp=124&pnp=161&cd=197


農林漁家民宿おかあさん100選とは?

農林漁家民宿とは、農家民宿、林家民宿、漁家民宿の総称です。


農業・林業・漁業を営みながら、民宿にお客様をお泊めして、交流活動や地域活性化に貢献しています。
農林漁家民宿では、お客様に自家製や地元の食材を主体としたお食事をお出しし、わが家の一室や離れの部屋にお泊り頂き、農林漁業や農山漁村の暮らしを体験していただけます。
「農林漁家民宿おかあさん100選」とは、そのなかでもとくに質の高い宿泊・食事・体験等を提供し、自身の民宿経営に成功し、地域活性化に寄与している“農林漁家民宿おかあさん”100人を選定する、農林水産省と国土交通省の認定事業です。
 認定者のご紹介は、「農林漁家民宿おかあさん100選」のホームページからご覧いただけます。
 ぜひ一度、おかあさん100選の宿にお泊りにいらしてください。

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