廃校活用ガイド

はじめに


 平成4年から平成20年の17年間で計4,533校の公立小中学校が廃校となっています。平成20年1月に読売新聞が実施した全国調査では、今後5年間で1,100の小中学校が消えるとの報道もあり、少子化の進展により空き教室の増加や統廃合など自治体にとって深刻な問題となっています。また、廃校を有する農山漁村地域では、少子・高齢化や過疎化の進展により人口減少や地域活力の低下など地域に暮らす方々にとって深刻な問題を抱えています。特に、地域の小中学校が統廃合により廃校となり使われなくなることは、地域活力をさらに減退させるのではないかと危惧されています。
 学校は、地域の子どもたちを育み輩出し、それを地域で支える住民とともに様々な想い出や記憶を共有してきました。学校は単なる教育施設だけでなく、地域コミュニティの中で住民の心のよりどころ、シンボルとなっています。
 廃校は地域にとって身を切る思いでの苦渋の選択であったかと思いますが、地域の置かれている現実を受け止め、地域が進むべき将来を見据えながら、廃校を活用し地域の新たな活性化拠点としてよみがえらせ、「地域を元気する」ことが何よりも望まれてます。
 このようなことから、今回、廃校施設の活用を検討している地域の方々に対して参考となり道しるべとなるよう「廃校活用ガイド」をとりまとめ、廃校活用ポータルサイトにて紹介することとしました。
 本ガイドに掲載されている内容が、廃校活用の答えではありません。そのあり方について一例を示したものであるとことをご理解ください。本ガイドは今後、さらに皆様にとって使いやすいものにしたいと考えていますので、お気づきの点などございましたら、まちむら交流きこうまでご連絡ください。


廃校の現状

 全国における廃校の発生と推移はどうなっているのでしょうか。
 文部科学省の調査によると、近年、少子化に伴う児童生徒数の減少によって学校の統合が進み、公立学校の年度別廃校 の発生数の推移を見ると、平成12年度以降増加傾向を示し、平成16年度には576校となり、それ以降、毎年400~500校前後の公立学校が廃校となっています。
 都道府県別廃校の発生数を見ると、「北海道」が最も多く、次いで、「東京」、「新潟」、「青森」、「岩手」となっています。


出典 公立学校の年度別廃校発生数(平成4年度~平成21年度/文部科学省文教施設企画部施設助成課)
出典 公立学校の都道府県別廃校発生数(平成4年度~平成21年度/文部科学省文教施設企画部施設助成課)


廃校活用の実態

 全国における廃校活用の実態はどうなっているのでしょうか。
 「廃校舎等建物の活用の有無」では、全体の約6割の建物が活用され、残り約4割が未活用(検討中を含む)となっています。
 「廃校舎等建物の活用用途」では、主に社会教育施設や社会体育施設として活用されることが多く、次いで、文化施設、福祉施設、倉庫等、日帰型体験施設、宿泊施設、庁舎等、集会所等、教育関連施設、加工製造施設等として活用されています。
 「廃校舎等建物の整備の有無」では、全体の約6割が整備を行わず、残り約4割が整備を行っています。活用の用途別で見ると、倉庫等・社会体育施設・社会教育施設等は整備を行わず、飲食物販施設・宿泊施設・福祉施設・日帰型体験施設等は整備を行う傾向がみられます。
 「廃校活用施設の運営主体」では、全体の約6割が地方公共団体によって行われ、次いで、任意組織、民間企業、NPO法人、社会福祉法人等の多様な主体によって運営が行われています。




活用に対する基本的考え方


 廃校活用を進めるに当たって、「活用に対する必要性や意義」、「活用に対する理念」を整理し、廃校活用に対する基本的考え方について地区に暮らす方々皆で共有することが大切です。


(1)活用の必要性や意義を示す
写真/きくちふるさと水源交流館(熊本県菊池市)
ぐり石運びの様子

 「なぜ廃校を活用するのか」、活用に対する必要性を明らかにし、地区に暮らす方々とで共有することが大切です。
 学校は、地域の歴史の歩みとともに、子どもたちを育み、若者を輩出してきました。戦後復興の木材・資金不足の中で、校区の良材・土地と資金・労力を提供し学校を建設した例も見られ、学校は多くの住民の想い出や記憶を共有しています。
 学校は単なる教育施設だけでなく、地域コミュニティの中で暮らす方々の心のよりどころ、シンボルとなっています。
 学校を地域づくりの新たな拠点としてよみがえらせ、活用することは、次世代に対して地域の歴史や文化を継承し、コミュニティを再生することにもつながり、社会的に意義のあることといえます。また、建築的価値や景観的価値のある建物を保存し、活用することも意義のあることといえます。


(2)活用の理念を持つ

 「何のために廃校を活用するのか」、活用に対する理念を明らかにし、地区に暮らす方々とで共有することが大切です。
 廃校を有する地域は、少子化、高齢化、過疎化などの問題を抱え、集落での自治活動や営農活動に支障をきたしている地域が少なくありません。廃校の活用を通じて、集落や地区でのコミュニティの活力向上を図り、校区というつながりのもとで、地域に暮らす方々が協力しあい、地域を元気にすることが何よりも望まれています。


活用へのステップ

(1)地域を知る

 「なぜ廃校に至ったのか」、地域で暮らしている方々で現実を再確認することが大切です。
 「自分たちが暮らす地域はどのような特性を持っているか」、地域が持つ強みや弱みなどを明らかにし、その特性を再確認しましょう。


(2)地域の宝(資源)を守り活かす

 地域には、廃校とともに使われていない未利用の農地や山林など資源があります。先祖伝来から守り伝えられてきた自然・歴史・生活文化・産業などの資源があります。
 「これら次世代に引き継ぐべき地域の宝(資源)とは何か」、地域資源の掘り起こしを通じてその価値を再発見し、廃校を活用することによって守り活かしていきましょう。


(3)地区の将来像を描く
写真/森の巣箱(高知県津野町)
カップルの誕生

 「将来、自分たちが暮らす地区でどのような暮らし(生活や仕事)をしていきたいのか」、地区で暮らしている大人たちや子ども、女性やお年寄りみんなで将来像を描き、廃校活用を通じてその夢を実現することが大切です。


活用のポイント


 地域活性化に欠かせない要因である「人」、「もの」、「お金」に着目し、活用のポイントを以下に示します。


(1)住民と行政とのパートナーシップを組む

 廃校活用の具体的な姿を見出すに当たり、「住民と行政とのパートナーシップ(協働)に基づく地域の連携体制を築く」ことが重要なポイントとなります。
 地域活性化という明確な共通目標のもと、住民と行政が一体となった廃校活用を検討するための体制を築きましょう。
 次いで、住民が持つスキルや能力が発揮でき、持続可能な施設の管理運営が行われるための体制を築まましょう。




(2)活用の用途(施設の使い方)を決める

 廃校活用を進めるに当たり、「地域の活性化を図るために必要な活用の用途(使い方)を決める」ことが重要なポイントとなります。
 「地区にとってどのような廃校施設の活用が望まれているのか」、地区懇談会の開催やアンケートなどを通じて住民のニーズを汲み取り、地区が望む活用の活用方法を整理しましょう。
 次いで、施設改修に詳しい建築などに携わる専門家の意見をとりいれ、実現可能な施設の活用方法を絞りこみ、活用の用途(使い方)を決めましょう。




(3)施設改修の資金(お金)を確保する

 廃校活用を進めるに当たり、「施設改修に必要な資金(お金)を確保する」ことが重要なポイントとなります。
 施設改修を行わず、そのまま活用できるのが理想ですが、廃校施設の老朽化の進み具合や活用の用途によって施設改修が必要となる場合が想定されます。
 「施設改修のための資金をどのように調達するのか」、国や地方自治体が支援する公的資金(施設整備等に係わる補助金)、民間資金(民間企業などからの拠出金等)の活用について検討し、もっとも望ましい資金調達の方法を確保しましょう。