リーダーインタビュー
第8回 産直あぐり(山形県鶴岡市・旧櫛引町) (株)産直あぐり 代表取締役 澤川 宏一さん

2010.02.11

産直あぐり(山形県鶴岡市)

[聞き手・文責:全国農産物直売ネットワーク 副代表 田中 満]
[地域:東北]

フルーツタウンの中心として観光案内も

店内の様子 産直あぐり

 都市農村交流を進めて発展を推進したいという旧・櫛引町の思いと、果物栽培が盛んな店の周辺地域をフルーツタウンと位置づけて地域の振興を図りたいという地元住民の願いが重なり、「産直あぐり」は設立された。この事業は直売・食堂・加工・体験・観光・交流など農村資源を活かす事業を推進し、地域住民の交流機能、コミュニティ機能を強化する複合型事業を目指していた。  直売所開店から10年以上経過した現在、ほぼその目的が達成されている。広域合併後は旧・櫛引町の拠点施設と位置づけられ、地域農業を活性化し、地域における観光案内所の役割まで果たしている。


直売活動をベースに総合交流事業を展開


 直売所「産直あぐり」は平成9年9月にオープンし、その後「加工あぐり」が11年、レストラン「食彩あぐり」が13年、修学旅行生の受入を目的とする体験農園が14年にそれぞれ運営を開始し、いずれも現在まで継続している。  直売活動を核に農村資源を最大限に活用した複合事業を目指し、様々な展開をしてきた。また、旧・櫛引町の事業により設立した経緯があるため、町が進めていた横浜市内小学校との交流事業、東京・神楽坂商店街との交流事業を8年間続けている。小学6年生100名が農村体験に来て直売所も訪問する。神楽坂商店街へは年6回出張販売している。  店総売上は9年度101百万円、10年度196百万円から順調に伸び、13年度に3億円を超え、19年度は354百万円に到達している。


平成20年より株式会社としてスタート


 産直あぐりの運営主体は設立当初の「フルーツタウン直売施設運営管理組合」から、平成20年5月に株式会社となった。役員はいずれも非常勤で取締役3人、委員10人の体制。委員は企画研修部、加工部、野菜部、花木部等の部長、女性の会代表、監査役などを兼務する。少額だが手当てを支給。従業員は店長、産直主任、食彩(食堂)主任、加工主任、庶務主任など11人、パート3人。直売、食堂、加工の各部門はそれぞれ従業員3人と当番、パートで運営している。  平成9年開設時の組合員は75名(家族単位)であったが、その後、野菜、花木生産者および40歳以下の若手農業者を補充して現在は86名に。販売手数料は10%。組合員以外に協力員(組合員の出荷が少ない山菜、きのこ、さくらんぼ、干し柿などをつくる地元生産者)がおり、これらの手数料は15%、加工品業者は20~30%である。  レストラン「食彩あぐり」は地元野菜中心の田舎料理の店。一皿350円で盛り放題のバイキングが地元高齢者に人気である。  併設の加工施設では売上額の多い順に、餅、ジュース、果物素材の菓子、うどん・そば(併設レストランへ供給)、団子、スナック菓子、せんべい、まんじゅう、ジャムなどが作られている。アイスクリームはコスト高のため、製造を中止した。


組合員研修など人材育成に力を入れる


 組合員には月1回4時間の当番がある。直売のレジ、食堂の厨房、加工施設での補助作業のいずれかを無償で担当する。また、イベントはほぼ毎月実施しているが、準備作業からのすべてを組合員の当番制で行っている。  組合員の売り場割り当ては、店内商品棚は1人2列限定、店外果物売り場は箱ものに限り制限なし。組合員出荷物の販売状況は1時間ごとに個人データがメールで携帯電話に送られる。果物は午後でも随時補充され、品切れは少ない。果物が品切れの時に注文があれば、ぶどうは5分以内、他の果物も15分以内に店に届ける。また、客の観光果物狩りの要望には即応している。  組合員への情報提供では、役員会報告、月別売上明細、クレームと店の対応内容などは毎月FAXで連絡する。また、個人別販売状況は携帯電話にメールで連絡する。研修には力を入れており、組合員全員研修、役員研修、職員研修を年1回実施するほかに、サミットなど直売活動研修事業には積極的に参加している。最近では、職員が野菜ソムリエに合格している。


果樹が主力で、平均客単価は1,600円


 19年度総売上額は354百万円。その売上額の内訳は組合員出荷物220、協力員出荷物および仕入品89、レストラン24、加工部門19である(すべて百万円単位)。組合員出荷物についてさらに内訳を示すと、果物115、野菜39、山菜きのこ11、花15、米14、加工品(主として漬物類)19百万円などである。組合員売上額の5割、会社総売上の3分の1を果物が占めている。その品目別内訳は、ぶどう36、和なし16、洋なし14、さくらんぼ12、柿12、りんご11百万円である。果物以外の目玉商品としては、鶴岡市農協が商標登録した「だだちゃ豆」に産地が近接する枝豆、赤かぶ、柿ジュース、トマトジュースなどがある。仕入品は地元農協の加工品などである。  客単価は約1,600円。果物売上が多いため客単価は高い。鶴岡市民に日常の果物を提供しているほか、贈答などもあるからであろう。経営状況は毎年度黒字経営で推移している。20年春から店頭のテント販売を常設屋根付き施設に変えたが、この整備費は積立金と借り入れで対応している。  鶴岡市内にはすでに常設直売所が10店、うち農協経営4店もある。多くのスーパーも直売コーナーを設けており、直売競争が始まり生産者の取り合いとなっているが、果物に特化している産直あぐりはそれ程競合していない。


競争と努力を重ね、果物の種類が豊富に


 当店で平成19年度に販売された果物の品種数は、ぶどう62、和なし23、洋なし18、りんご29、さくらんぼ21、もも22種にも及ぶ。組合員が競争して自分の品種づくりに取り組んでおり、多くの品種が販売されるので、客は数品種を買って食べ比べするなど喜んでいる。  鶴岡市の位置する庄内平野は米どころであり、だだちゃ豆などの野菜産地であるが、直売所の周辺地域は米や野菜づくりより果樹栽培に適し、250年前から果樹に力を注いできた。ぶどうを例にとると、戦前から甲州ぶどう、戦後はさらにデラウエアがつくられ農協に出荷してきた。平成になり大粒種に挑戦する農家が現れ、9年直売所オープンの後は大粒種が客の人気となり、生産者はその栽培に力を入れ始めた。15年頃から組合員が開発した新品種が次々に売りだされ、それぞれ特徴あり消費者の評判を呼び、組合員の開発競争がますます熱を帯びた。19年度実績では62品種が販売されたが、今後5年以内にさらに20種類程度増える予測である。少量多品種販売を目指す直売所にとって生産者の努力による多品種化は有り難い。最近ではぶどう大粒種詰め合わせセットが人気商品となり、宅配でも送られ、全国の宅配先から店に注文がくるまでになった。


さらに出荷者の意欲が高まる仕掛け


 店としては、総売上額が微増となったので、組合員に競争意識を持ってもらい生産出荷意欲がさらに高まる仕掛けを考えたいとしている。売上額の低い組合員の底上げも図りたい。家族の中でも個人別の意欲を高めるために組合員家族の枝番制を導入し、個人売上としたい。
 野菜は種類、数量ともにまだ少なく、午前中で売り切れる状態で、店の大きな課題である。しかし、客の反応をみると果物は産直あぐりで買い、野菜は鶴岡市内の他の直売所で買うと割り切っているようでもある。
 加工施設は設備が5年程度で更新が必要となるので維持が大変。売上が横ばい状態なので、新たな販売展開を計画している。