リーダーインタビュー
第7回 JA前橋市「産直ゆうあい館」(群馬県前橋市) JA前橋市産直部会 会長 青木 公平さん

2009.06.05

JA前橋市「産直ゆうあい館」(群馬県前橋市)

[聞き手・文責:全国農産物直売ネットワーク 副代表 田中 満]
[地域:関東]

「友愛」+新鮮・安全・安価が基本

店内の様子 JA前橋市「産直ゆうあい館」

 地域の高齢農業者、女性農業者などが生産する農産物を販売に結びつけ、その生き甲斐、働き甲斐、収入、生産などを向上し、地域農業の生産振興を図ろうという目的で、平成8年12月から仮設テントで試験販売をはじめ、9年7月にJA前橋市が店を開設した。会員が販売できるものは市内で自らつくったものに限る。運営の基本方針は「ゆうあいをモットーに、いつも新鮮、安全、安価」なものを販売することとしている。


農協と産直部会の役割分担


 ゆうあい館の経営は、開設当初からJA前橋市と出荷者で組織する「産直部会」が役割・責任を分担し、生産者が運営に主体的に関わってきた。施設の維持管理、従業員の雇用、米販売、食堂経営などはJAが担い、米以外の農産物および加工品の品質管理および品揃えは産直部会の責任となっている。仕入品については、産直部会の意向や会員の出荷状況などを踏まえ、店長(JA)が決めている。  開設以来10年間にわたり順調に売上額を伸ばしてきたのは、生産者が主導的に直売所を運営しているからと専門家やマスコミからも評価されている。これまでは近くに競争する店がなかったことも幸いしていたが、平成19年度に入り競争が始まっている。


役員22名で部会の運営会議を月1回開催


 産直部会の会員になるには、JA前橋市組合員およびその家族であれば入会料1千円と年会費2千円を支払えば良い。ただし、商業活動している農家や加工業者などJA組合員以外のものは入れない。現会員数は660人だが、出荷している実質会員は200名程度。会員は現在も微増している。  部会の組織は、会長、副会長2名、役員・役員補佐、班長、会員である。副会長は店内総括と焼き饅頭・焼き芋販売総括を担当する。さらに役員の中から会計、書記、イベント部長、出張イベント部長、花卉部長、加工部長が任命される。会員30名単位に役員および役員補佐を選ぶ。現在それぞれ22名。役員22名で部会の運営会議を月1回開催。この会議で運営の基本を決める。定例会の議題や資料をつくるために3役会議も毎月1回開催。役員の下に地区ごとに班長を置き、個別会員への連絡事項を伝達する。最高意志決定の場は年1回の総代会で、会員10人あたり1人の総代がでる。  出荷者は売上額から農協に10%、産直部会に0.5%の手数料を納め、さらに年会費一律2千円を部会に納める。産直部会は0.5%の手数料(18年度は合計で約250万円)と会員年会費(約130万円)、農協からの助成金(年60万円)、部会独自の加工品(焼き饅頭、焼き芋)販売の収入等で運営している。  なお、加工品は「けやき工房」のパン、そば、うどん、餅類などと、個別生産者30名の加工品を販売している。けやき工房は直売所に隣接しており、農家女性22名の起業で、工房として産直会員になっている。  また、部会の下部組織(コープ出荷組合)が市内3店舗にインショップ「ゆうあい館コーナー」を設け、独自に総会や研修を行い、農産物を出品している。


特に力を入れるのが、会員による検品活動


 部会活動としては、(1)出荷物の品質等をチェックする検品活動、(2)夕方の残品引き下げ、たな掃除、(3)店内監視活動(土日休日午前中の店内巡視)、(4)出荷物の量、品質規格などの基準作りと出荷者の指導、(5)クレーム処理:クレームは部会長または副会長が出荷者に注意、クレーム3回で懲罰会議にかけ1~2週間の出荷停止、(6)JAなどからの依頼イベント参加者の割り振り作業、(7)部会独自イベント実施:周年祭(7月3日間)、鯉々祭り(5月3~5日)、お彼岸セール、お盆セール、焼き饅頭+焼き芋イベント(月2回実施)等、(8)視察研修活動(全体研修、イベント協力者研修、役員研修)、(9)保健所、農林事務所などの指導研修、(10)農薬残量検査:毎月3検体自主検査実施などを行う。  部会活動で最も力を入れているのが検品活動である。役員と役員補佐の合計44名が担当し、1日2名が当番となり開店前に出荷物を検品。不良品にはイエローカード発行、イエロー3回でレッドカードとなり出荷停止1~2週間。この活動により販売品の品質が向上し、売上げ増につながったと考えている。検品した当番が当日夕方の残品引き取りなども担当する。部会活動参加者には1時間あたり730円支給する。


目玉商品は野菜、切り花、きのこ、弁当など加工品


 ゆうあい館の19年度総売上額は約6億3千万円となる。そのうち会員が出荷した産直品(野菜、果物、花卉、加工食品)が約5億1千万円。その他は農協扱いで、米、食堂、仕入品などである。客単価は1,400円。売上額は平成9年開店以来毎年順調に伸びてきたが、19年度は近くにオープンした大規模直売所の影響もあり、わずかに減少となる。  単品別で売上額の大きなものは、トマト(年間約39百万円)、きゅうり(同24百万円)、いちご(同18百万円)、なす、たまねぎなどの野菜で、きのこ類、切り花、弁当などもよく売れる。地場産の野菜、きのこ、加工品が豊富と自信を持っている。  なお、部会下部組織のインショップ活動は上記総売上額には含まれないが、3店で年間1億強の売上になっている。


競争時代に入った対応策の実現に向けて


 直売所間競争が激しくなってきた。2㎞前後離れた地点に民間経営の直売所とスーパー3店舗のインショップができた。特に直売所は市外の県内特産物を多く集めて販売しており、会員の多くも出品しているので、強力なライバルになりそうである。ゆうあい館は18年度まで順調に売上額を伸ばしてきたが、19年度はそれらの影響を受けてわずかに減少している。  そこで、競合店に負けないために様々な対策が必要になってきた。(1)店内フロアを拡張し、店内をカートで回れるようにする、(2)そのためにトイレ、事務室などを移設する、(3)常設屋外販売施設を整備する(現在は必要時には仮設テントで対処)などが緊急の課題である。これらは施設を管理するJAへ要望しているが、まだ実現には至っていない。JAと産直部会との十分な意志疎通も重要な課題となってきている。