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岩手県釜石市 鉄のまちで海と山の新しい魅力を発見

2016.10.24

失敗を恐れず“Never mind”精神でチャレンジ

東日本大震災から5年、ラグビーワールドカップの開催地決定で注目される釜石。海と山で始まった新しい取り組み
[地域:東北]

鉄のまちを象徴する駅前風景

 岩手県釜石市というと頭に浮かぶのが製鉄所とラグビー。駅には2019年のラグビーワールドカップ開催地決定の垂れ幕、そして駅の真正面、広大な敷地に新日鐵住金釜石製鉄所が控えています。一見工業都市といった印象を受けますが、郊外は自然がたっぷり、三陸海岸の入り組んだ入り江と半島、山里の昔ながらの風景と海山両方をいっぺんに楽しめるまちなのです。




海の魅力(根浜海岸~箱崎半島)

 駅前から車で宮古方面に続く国道45号を20分北上した鵜住居(うのすまい)地区はラグビーワールドカップのスタジアム建設予定地。かさ上げした土地に復興住宅を中心とした新しい町が生まれようとしています。
 陸中海岸国立公園の景勝地根浜(ねばま)海岸を包み込む大槌湾の先、太平洋に突き出た半島の漁師町箱崎地区では地元漁協の協力の下、養殖、定置網漁などの漁業体験の試みがスタートしました。海の魅力を知ってもらうのには漁師さんに先生になってもらうのが一番、以前は皆個人でやっていた体験活動を組織化し、体験メニューも考案しました。復興、後継者問題と課題はあるけれど、人に来てもらいそして漁師さんの副収入に少しでも貢献できるようになればと運営団体であるNPOおはこざき市民会議の下川翔太さん。今後は宿泊施設との連携も図りたいと将来に期待を寄せています。 


根浜海岸 奇跡的に残った黒松の海岸林
下川翔太さん


山の魅力(三陸駒舎)

 釜石の魅力は海だけではありません。鵜住居川の上流にある三陸駒舎を訪れました。山間の橋野地区では、今から約160年前の江戸時代後期、日本初の洋式高炉があった橋野高炉に近くの鉱山から産出された磁鉄鉱を運搬するための運搬用の馬「駄馬」が活躍し、長い間人と馬が一つ屋根の下で生活を共にしてきました。しかし時代は変わり30~40年前まで飼われていた馬もやがて姿を消します。この地に移り住んだ施設の創設者黍原(きびはら)豊さんが10数年空き家となっていた南部曲り家を500人以上の協力を得て2015年に改装。道産子を飼育しながら2016年三陸駒舎として再生させました。民泊や馬とのふれあいができる施設では、被災した子供達にホースセラピーで心と体のケアを施す取り組みや地域文化を再生する様々な試みもスタートしています。




宝来館

 根浜海岸の宝来館は黒松の海岸林越しに大槌湾を一望できる絶好の場所にあります。三陸の新鮮な魚介類等地元の食材を取り入れた食事や目の前に松林を一望できる露天風呂など風光明媚な根浜を満喫できるお宿です。女将の岩﨑昭子さんはグリーン・ツーリズムの素晴らしさに早くから気づき、海と山を川でつなぎ釜石という一つの空間を楽しんでもらおうという発想で地域おこし活動を実践してきました。その拠点の一つとなっていた宿も津波で大きな被害を受けましたが修復工事を施し2015年4月見事に復活させました。宿の裏山に続く林道は津波避難路として整備され、その山の向こう側にラグビースタジアムが建設される予定です。


宝来館全景
眺望が魅力の露天風呂
新鮮な海の幸を取り入れた夕食メニュー
裏山に続く津波避難道


失敗を恐れず“Never mind”精神でチャレンジ

 とにかくお話を伺う時間も無いほど忙しい女将の仕事。チェックインまでの時間を使って来客対応、夕・朝食時にはレストランに顔を出し、全てのテーブルをまわり宿泊客に丁寧に声を掛けます。夜は会合に打ち合わせにと食事を摂る時間も惜しんで動きます。そして日課となっているのが朝食後に行う震災の語り部。大広間の壁に張られたスクリーンに1枚1枚映し出される釜石の中心部や根浜集落の当時の様子を気持ちを込めながら説明します。最後に目にした宝来館に襲いかかる津波から裏山に向かって逃げ惑う人々を必死で撮影した映像は言葉を失うほど衝撃的なものでした。
 岩﨑さんのもう一つの顔が根浜Mind理事長の仕事。津波で何もかも失った根浜集落を蘇らせようと宿の経営とは別に一般社団法人を立ち上げ日々勤しんでいます。この夏復興工事が完了した港に設置された白いコンテナの中にはイギリスのウェールズにあるアトランティックカレッジから贈られた真っ赤な救命艇「ウェールズ号」が格納されています。ウェールズ号を使った水難救助スクールも開催し、今年の10月に根浜海岸を会場として繰り広げられた岩手国体のオープンウォータースイミング、トライアスロン競技では救助艇として活躍したそうです。
 今もなお仮設住宅での暮らしが続く女将さん、宿から目と鼻の先、浜を見渡す高台に自宅を建てる予定とのこと、そこに将来自らも参画する民泊村を整備する夢を描いています。漁師の宿はもちろんライブハウスの宿もあったりといろんな人が訪れて地域全体を楽しんでもらえるきっかけになることを望んでいます。
 根浜Mindを一つの機会として若い人たちに地域コミュニティビジネスの場を提供したい。失敗してもいいから“Never mind”(気にするな)精神でチャレンジしてもらえれば。岩﨑理事長の願いが組織の名前に現れているようでした。


岩﨑昭子さん
朝8時15分頃から広間で震災の語り部が始まります。
高台に整備中の民泊村
果敢に救命に向かうレスキューボート


取材した施設の位置

A JR釜石駅
B 三陸駒舎
C 宝来館