心のよりどころ、シンボルとしての木造校舎の小学校
旧木沢小学校(長野県飯田市南信濃地区)を訪ねて
長野県飯田市

2011.09.01
[地域:中部]
グリーン・ツーリズムを楽しむ第7回目は、長野県飯田市南信濃地区にある旧木沢小学校を訪ねました。
旧木沢小学校の外観

 木沢の自然・歴史・伝統文化の継承や地域の活性化を図るため、廃校となった旧木沢小学校の木造校舎を保存し、地区の新たな交流拠点として活用されています。
 また、旧木沢小学校は、遠山郷の山里の暮らしと文化に触れる観光スポットとして、多くの観光客が訪れています。


◆映像で見る旧木沢小学校と木沢の人々

旧木沢小学校の歴史やそこに生きる人々の姿が貴重な映像として残されています。

 このビデオは、遠山郷と呼ばれる飯田市上村、南信濃両地区の風景を収めた映像作品「遠山郷物語」のひとつで、製作者の堀場俊和さんが撮りためた映像(2001~2006)をもとに地区の歴史、文化が分かる­よう構成されています。


◆旧木沢小学校の活用の様子

旧木沢小学校校舎の平面図

 旧木沢小学校の各教室では、「山の資料室(遠山山の会による南アルプス登山や自然の紹介)」、「最後の一年生(閉校まぎわの1年生の教室)」、「北島新平資料館(地元在住の芸術家作品の紹介)」、「祭りの資料館(木沢霜月祭保存会による霜月祭りの紹介)」、「林鉄資料館(遠山森林鉄道や遠山川の埋もれ木の紹介)」、「思い出教室(一日入学の再現)」、の展示が行われ、廊下の壁には、昔の子どもの頃の写真などが数多く飾られていました。また、旧図書室では「藤原文庫(経済アナリスト藤原直哉氏寄贈の図書)」となっていました。



山の資料室(2年教室)
最後の一年生(1年教室)
北島新平資料館(6年教室)
祭りの資料館(5年教室)
林鉄資料館(4年教室)
思い出教室(3年教室)
藤原文庫(図書室)
事務室(職員室)
子どもの頃の写真
子どもの頃の写真


 取材中、旧木沢小学校には、孫二人を連れたおばあちゃん、バイクでの一人旅をする若者、入り口で記念写真を撮る年配のグループなど、老若男女のいろいろな人々が訪れていました。特に、教室から聞こえてくるピアノの音は、とても印象に残りました。


廊下で走り回る子供
廊下で昼寝をする猫
記念写真を撮る年配グループ


 旧木沢小学校では、さまざまなイベントや催しが開催されています。昨年(平成22年度)は、「南アルプス開山式(6月)」、「浜井場小学校セカンドスクール(6月、7月、10月、12月)」、「児童擁護施設サマーキャンプ(8月)」、「アルゼンチンタンゴ交流(9月)」、「第4回遠山郷マラニック大会(9月)」、「遠山森林鉄道ウォーキングツアー(11月)」、「霜月祭り交流(12月)」、「遠山藤原学校通年開校」が開催されました。
 通常の来校者を加えると、地域内外から年間約4,000人以上の人々が旧木沢小学校を利用しているとのことでした。


浜井場小学校セカンドスクールの様子
浜井場小学校セカンドスクールの様子


◆木沢小学校の歩みと活用のプロセス

木沢小学校の歩み

 木沢小学校は、明治5年に修身学校の名で発足し、はじめは八幡神社境内の回り舞台で授業が行なわれていました。明治37年に新校舎が建設されましたが、昭和5年の木沢の大火によりお寺を残して全てが焼失してしまいました。
 復興に向けて、村の人々は立ち上がり、総出で資金調達を始め、山から木材を切り出し、地ならしから竣工まで多くの人々の努力と苦心のもと、昭和7年に木沢小学校が再建されました。
 その後、木沢小学校の生徒数は、昭和20年に310名、昭和34年に264名を数えましたが、その後は減少の一途をたどり、平成3年の休校となった時点での生徒数は26名(卒業生8名、在校生18名)となりました。平成12年3月には、正式に廃校が決定し、学校発足127年の歴史の幕を閉じることとなりました。

 昭和30年代後半に木沢小学校で教鞭をとった南信濃地区に暮らす元先生に当時の学校の様子をお聞きしました。『当時の教育は、夢を持って社会に出ることを目標とし、たくましい人間関係と思いやりを育てることに力を注いでいた。始業の前にマラソンをし体を鍛える。木造校舎の床を生徒みんなで磨く姿があった。小学校のできごとを夢でみると、死ぬまで先生で、あのときの教え子の姿がよみがえってくる』とのことでした。




活用に向けたプロセス

 平成3年5月、木沢小学校の活用方法を研究し、地区の活性化を図ることを目的に、木沢地区活性化推進協議会が発足しました。設立当初は、地区の課題について行政への要望が主な活動でした。

 当時の様子を協議会メンバーの方にお聞きしました。『木造校舎を壊すのは簡単だけれども。先人の方々がボランティアで再建した小学校、地区の歴史とともに歩んできた小学校をどうにか保存し、活性化に役立てたいと思っていた。地区の状況は、住民全ての人々が賛成ということではなかった。自分たちがこの地で暮らしてきた原点を残しておきたい。齢をとると失うものが多く、そのよりどころを残しておきたい。その想いで活動に奔走してきた』とのことでした。

 正式に廃校となった平成12年以降、旧木沢小学校では、研修施設やコンサート会場として臨時に利用されていましたが、平成14年にプロ・アマ写真家出品や地元住民の提供による「山と祭りの写真展」を開催し、平成15年には協議会メンバーの努力によって「山と祭りの写真展」を常設展示できるようになりました。
 平成15年9月には、木沢地区活性化推進協議会の若手メンバーによる木沢活性化プロジェクトチームを結成し、同年11月には木沢小学校の卒業者を対象とした「よみがえれ 旧木沢小学校一日体験入学」を開催し、木沢小学校の保存活用に対する地域住民の理解と協力を深めることとなりました。


一日体験入学(平成15年)
一日体験入学の時間割(平成15年)


 さらに、平成16年には、行政と連携を図り、県のソフト事業を導入し、木沢地区に暮らす住民の参加のもと、木沢の宝大発見マップの作成(木沢9集落)、廃校活用先進地視察(山梨県須玉町)、講演会・発表会(木沢の明日を語り合う会“もんずらどうずら木沢むら”)が開催され、木沢の地域づくりの機運を高めるものとなりました。


木沢の宝“食、自然・くらし・歴史、信仰、木沢小学校の活用法”の地図(体育館にて展示)


 木沢地区活性化推進協議会による旧木沢小学校での活動が評価され、平成17年12月に「ムトス飯田賞(特別賞)」を受賞、平成21年2月に「南信州地域づくり大賞(県知事賞)」を受賞することとなりました。
 また、老朽化する旧木沢小学校の木造校舎の改修に向けて、平成17年度に土台や壁の補修、平成22年度に屋根の改修が行政の支援のもと整備されることとなりました。
 旧木沢小学校の取り組みも、平成3年の休校から20年、平成12年の廃校から11年を迎え、次世代を担う後継者・リーダーを育てバトンタッチしていくことや、旧木沢小学校の維持管理費を捻出すめための活動の柱となる収益事業の取り組みを新たに見出していくことが課題となっています。
 長野県飯田市の遠山郷を訪れた際には、是非、旧木沢小学校に訪れてみてください。また、旧木沢小学校を舞台とするイベントや交流活動へ参加し、木沢地区活性化推進協議会の活動を応援していきましょう。
 取材にご協力いただいた木沢地区活性化推進協議会、南信濃まちづくり委員会、飯田市南信濃自治振興センターの方々に感謝いたします。




◆寄り道 はんば亭(下栗の里)



 耕して天に至るという山の斜面に畑・農家のある遠山郷上村下栗の里にあるそばやで、地元の女性グループが交代で切り盛りしています。地元のおばあちゃんの手打ちそばや漬物、いも田楽などを食べることができます。営業時間は、10時~16時。土・日・祝日のみ営業で、冬期は休業となります。




旧木沢小学校のグリーン・ツーリズムルートマップ

今回巡った旧木沢小学校周辺のグリーン・ツーリズムのルートマップです。A 旧木沢小学校、B はんば亭 
地図左下の“+開く”をクリックすると各拠点への道順・距離と所要時間が表示されます。