第6回 全国農産物直売サミットご報告

2011.07.20
~日本の活力は直売所から。地域を支える直売活動~

概要


●日 時 平成22年10月14日(木)〜15日(金)
●会 場 長野県安曇野市 安曇野スイス村「サンモリッツ」
●参加者 全国の農産物直売所関係者 560名
●主 催 全国農産物直売ネットワーク/(財)都市農山漁村交流活性化機構
●後 援 長野県/安曇野市/長野県産直・直売連絡協議会/長野県農業会議/安曇野市 直売所連絡協議会/全国直売所研究会/関東農政局/全国農業協同組合中央会/(社)全国農業改良普及支援協会/(社)農山漁村文化協会/(社)全国農協観光協会


開催地挨拶

長野県農産物流通
マーケティング室長 
赤羽 昭彦さん








安曇野市副市長 
村上 広志さん








安曇野市直売所連絡協議会 会長
(三郷サラダ市組合 組合長) 
三澤 勇さん

長野県農産物流通マーティング室長 赤羽 昭彦さん
 全国の皆さま。ようこそ信州へ。本日は全国で直売所や加工事業を進める地産地消リーダーとして活躍の皆さまが参集されています。消費者の食の安全・安心への関心の高まり、農家の高齢化、食料自給率の低下など、農業分野も課題が山積みです。その中で、生産者、消費者の双方から期待されているのが農産物直売や農産加工の活動です。
 長野県でも各種キャンペーン、長野県産直・直売サミットの支援、アグリビジネス支援講座などを通じて、地産地消を進めています。県内には常設の農産物直売所は184ヶ所あり、うち年間売上高が1億円以上ある直売所が32ヶ所。各店舗とも商品の品質、栽培技術へのこだわり、観光客への情報提供など特色ある取り組みを進めています。本年9月には「長野県産直・直売連絡協議会」も発足し、県としてはこれらの活動をさらに支援してまいります。全国サミットの開催は、長野県としてもまたとない機会。皆さまの明日の直売所経営の糧にして下さい。

安曇野市副市長 村上 広志さん
 全国サミットの開催地に当市が選定された名誉に感謝します。安曇野は東京から全国一遠いと言われますが、北海道から沖縄まで大勢の皆さまにお越し頂き、ありがとうございます。安曇野市民は自分の家から見えるアルプスが一番きれいだと思っている風光明媚な土地です。環境省選定の名水百選や青空・星空の美しい町に選定されています。農産物ではりんご、わさび等が特産品です。一方、産業も盛んで、田園産業都市としても発展しています。さらに、2011年のNHKの朝ドラマ「おひさま」の舞台が安曇野市で、撮影も進められています。
 当市では直売活動も活発で、市内9店で構成される直売所連絡協議会では共同で研修やPR、イベントを進めています。直売所は生産と消費が最も近い場所です。全国の直売所が情報や意見を交わし、今後も直売所が地域活性化の拠点となることを期待しています。

安曇野市直売所連絡協議会 会長(三郷サラダ市組合 組合長) 三澤 勇さん
 私も安曇野の果樹農家です。安曇野市を全国サミットの会場に選んでもらい、こんなに大勢の皆さまにお越し頂き光栄です。市内には現在9つの直売所があります。お互いに商売敵でもありますが、地域の発展のために行政の協力も得て、協議会を立ち上げて3年目を迎えます。単独の直売所ではできない学習会や情報発信などを合同で進めているところです。今の安曇野市はりんごの最盛期。是非、安曇野の旬を味わっていって下さい。


講演

「農産加工と直売所のあり方」
小池手造り農産加工場 
代表取締役 小池 芳子さん
下伊那郡の山村喬木村で農村女性の自立を目指し、直売所を開設(昭和59年)。生産農家から農産物を預かり、高い技術で加工し、生産農家の名前で販売できるようにして戻す、「受託加工」という業態を開発。加工所も設立(同61年)し、先駆的役割を果たす。現在全国各地1,800件の農家・団体とネットワークを組む。平成20年に長野県知事表彰。平成22年黄綬褒章。主な著書に『手作り食品加工・コツのコツ』(全5巻)農文協等。







農産物直売と農産加工の関係

 全国的にすごい勢いで直売所ができています。売り上げ成績の良いところから、自分たちの誠意だけを売っているところまで色々あります。直売と加工は切っても切れません。農産加工を進めるものにとっては、直売所があってこそ生計も成り立ちます。
 私も昭和59年にサッシ2枚の無人販売所からスタートしました。当時は直売所が珍しく、全国から長野に取材に来ました。何千人という人が長野の出窓で販売する私の直売所に取材にきて、そこから全国に発信していきました。そして、加工品を作らなければ直売所の収入が安定しないことを学び、昭和60年頃より農産加工をはじめました。山間地では農産物だけでは成り立ちません。

農産物をムダにしない商品づくり

 収穫したきゅうりは曲がったものから小さいものまで5kgずつ袋に詰めあわせ、ピクルスや漬物のつくり方を書いたレシピを商品につけて販売しました。きゅうりを買った人は料理の技術も買えるわけです。青いトマトはジャムに、ピーマンの葉と熟成前のピーマンでは惣菜をつくりました。農産加工の工夫は無限大です。
 農産加工は全国との連携も可能です。山梨で余った小ナスを漬けものにする。メロンの産地の茨城から摘果したものを仕入れて商品化する。青い桃のたねが柔らかいうちに加工して商品化する。生産された農産物は最後に捨てる部分はないという商品づくりにより、最後までお金に換えていくことが出来ます。そして出来た商品を売ることができるのが直売所です。もったいない精神で商品化できるのが地産地消の取り組みなのです。

農家の知恵や技術、食文化を伝承する

 顔の見える商品づくりから次のステップへの展開も必要です。農家の同じ顔写真を5年も店に貼り続けて安心しているところはありませんか。農家からの発信も次のステップに進めていくことが大切です。それは、農家の知恵を消費者に分けてあげること。それを直接提供できる場所が直売所です。レシピに農家の一言添えて、農家の心を訴えていく。農産物や加工品に作った人の心をのせて伝え、お客様の料理につなげてあげる。それが食文化の伝承につながります。これは綺麗に売っているだけのスーパーには出来ません。
 直売所ではただの挨拶や声がけではなく、農家の技術や知識を持った人が声がけすることが大切です。売り上げを伸ばす事よりも、着実に信念をお客様にお見せすることが大切です。これを徹底して進めていくことが、直売所の成長を見守る私達の役目でもあります。
いくら豆が身体に良いとわかっても、もどし方や煮方がわからないと食べられません。お客様が自分で料理をして食べられるようになるまで情報提供することが大切なのです。

連携して支え合う直売ネットワークを期待

 農産加工と直売所が連携することが大切です。農産物を植える時には、商品になるところまで考えてスタートしなくてはなりません。あらゆるものを商品化していくのが農産加工の私たちの役割です。ただ、我々が全国をカバーすることはできません。皆様がそれぞれの地域を担ってくれることを期待しています。
 農家が手をかけた作物は子どもと一緒。それを決して捨てずに活かすことを考えるのが農産加工の役割です。農業生産の上で規格外は必ず出ます。それらもすべてムダにはしないため、産地が生きるためにも支え合う必要があります。連携して商品化、ブランド化する支え合う直売ネットワークがなければなりません。


ディスカッション[1]

「長野のリーダーに聞く、直売活動の現状と新たな動き」

ほりがね物産センター組合(安曇野市) 代表理事組合長 長田  廣
農産物直売加工センターあさつゆ(上田市)組合長 伊藤 良夫
アルプス市場 社長(松本市) 犬飼 浩一
道の駅「雷電くるみの里」駅長(東御市) 唐澤 光章
産直新聞 編集長 毛賀澤 明宏

個性豊かな長野の直売所から課題提起

毛賀澤:この時間は、長野らしく理屈っぽいディスカッションを進めたい。自分は全国サミットや直売研究会に対して、議論が生ぬるい、長野はもっと議論が進んでいると常々訴えてきた。是非、全国の皆さんに個性豊かな長野の直売所の現状を紹介し、長野の問題も浮き彫りにしながら、全国的な議論にもっていきたい。今、直売所が抱えている問題を長野の事例、全国の事例から浮き彫りにし、ともに課題解決方法を探りたい。

地域の伝統食を直売所から提供

ほりがね・長田:当直売所は県内でも早い段階で開設。平成3年に「堀金新鮮市」を開始したのに始まり、平成8年に物産センターを立ち上げた。当初は、物産・加工・食堂部門を別組織として立ち上げたが、加工・食堂の経営が厳しく、平成11年に3組織を一本化した。組織として弱い部門に集中投資をして体制強化を図ってきた。
 公共施設を活用し、自分たちの利益・収入を高める事業なので、施設整備は自主財源で進めることを基本としている。約80名の従業員はほぼ旧堀金村を中心とした安曇野市民である。
 年間売上は約6億4千万。年間1億3千万を給与や福利厚生費に支出する。特に加工に力を入れ、地域密着の商品を作っている。最近の若い奥さんは地元の人でも漬物を作ったり、伝統食を作るのが苦手なので、それらを商品化し直売所や食堂で提供して人気商品となっている。

価格の自由、出荷の自由、荷姿の自由

あさつゆ・伊藤:上田市の旧丸子町にある直売所。開設して6年半だが、小規模の直売所は昭和60年代から開設している。出荷者は現在約260名。「あさつゆ」が目指すのは、「直売所らしい直売所」。ここに来れば本当の直売所が見ることができるというお店づくりを模索しながら進めている。私たちの基本は個々の農家の創意工夫を大切にすること。規制はできるだけなくした。農家のやりたいことができる店にする。よって当店は3つの自由を掲げている。「価格の自由」「出荷量の自由」「荷姿の自由」。出荷者にはこれらの自由を保障するので、売り場で創意工夫を発揮して欲しいと訴えている。

売上から生産技術まで、生産者に発信

あさつゆ・伊藤:組合員への情報提供を特に重視している。1時間おきに携帯メールを出荷者に発信する。土日祭日は客数や売り上げ情報も発信。1日の終わりには売上をバックヤードで組合員に公開し、次の出荷につなげてもらうようにする。毎月の出荷・売上データも発信。総会時には詳細な売上と出荷データも公開する。例えば、トマトを3月に何人出したかを知らせることで、組合員の来年の作付けに役立ててもらう。そのようなデータを出せるオリジナルのソフトを独自に開発してきた。
 生産者向けには「どきどき情報」を提供。これは農家に対して「蒔きどき、植えどき、収穫どき」に関する情報をまとめたもの。バックナンバーも含め、ホームページでも公開している。記事の作成には地元の普及センターの協力がある。毎回編集会議を開き、生産者が求めていると思われる情報を中心に掲載している。地域の生産者に役立つ地域に即した農業技術を集積し、将来的にはデータベース化を目指している。

農家の生活が成り立つ直売所を目指す

あさつゆ・伊藤:直売所からの情報発信を通じて農家の生産意欲や技術を高めてもらい、直売所で農家の生
活が成り立つレベルにまで持っていきたい。販売力のある店になれば、直売所だけで農家の生活が成り立つようにもっていけると考えている。
 昨年から温泉地で、今年からは上田市中心部で、出張販売も始めた。店の職員を2人ずつ派遣している。決して条件の良い場所ではないが、双方とも地域活性化のために地元から依頼されて出店を決めた。今では開店前に30名くらいの行列が出来るほど定着。近隣での出張販売の分野にも未来があると感じている。


生産情報を伝えられるのが直売所

アルプス市場・犬飼:平成8年10月にオープンした直売所で15年目になる。民間会社の経営で35名の生産者からスタートした。自分は29歳で直売所を先代から任せられた。それまでは流通業界で店づくりや集客を学んでいた。当初は給料も休みもとれない日々が3年続いた。子どもを背負ってレジに立っていたことが思い出される。今は年間約4億3千万の売り上げ。生産者も約400名までに増加。委託販売の形態であるため、生産者に物を出してもらうことに苦労した。当時は地元企業の社員向け売店に入れてもらい出張販売をして、何とか生産者から預かった商品を売り切ったりもした。今ほど売れなくても作物を出してくれた生産者に心から感謝している。
 自分達は直売所が100円均一などで安売りすることにも疑問があった。また、発酵堆肥「土乃守」と出会い、農家にこの堆肥を使ってもらうことをお願いした。商品の差別化は価格競争ではなく、品質・味での勝負だということを生産者にお願いしている。
 地産地消の学校給食への食材提供も進めている。塩尻市を中心に県内70数校の学校給食に食材を入れている。化学肥料を使わずに美味しくできたものを提供したいと考えている。
 直売所はお客様を感動させなくてはならない。そのためにも店として出来るだけ生産者の畑をまわり、何をいつ作っているかを把握し、生産者とコミュケーションをとることに努めている。売る側として生産情報をお客様に伝えられることが直売所とスーパーの違いでもある。
 川上が潤わなければ、川下も潤わない。お金も心も生産者が喜べる直売所を築いていきたい。店に関わる全員でチャレンジしながら日々努力している。

徹底して地元産にこだわる道の駅

雷電くるみの里・唐澤:県東部の東御市にある道の駅。江戸時代の名力士、雷電の故郷で、くるみの特産地。オープンして7年目。とことん地元にこだわる道の駅。道の駅とは地域の情報発信基地であり、地域間交流ができる場。生産者と消費者。都市と農村などの交流である。売れるからと、よそから販売品を仕入れない。利益は上がるかも知れないが、当地からの情報発信にならない。直売所は地元農家のものを売るところ。だから地元産以外は売らない。市場や青果業者からの仕入れも一度も行っていない。食堂にはラーメンもカツ丼もない。そばやくるみのメニューは沢山ある。徹底した田舎料理。土産品も地元優先。
 当初、冬場は何もなかった。1日の売り上げが1万6千円ほど。町やJAも見かねて、ビニールハウスなどを助成してくれた。そこに道の駅としても助成を上乗せし、合計60%の補助金を創設した。そして、冬野菜の生産を進めた。いざ生産を進めるとほうれん草ばかり。でも、ここのほうれん草は甘いと評判にもなった。冬の寒さに耐えたから甘くなる。
 いちごはすべて露地もの。水耕栽培も近隣で進めているが、うちは畑のものだけ。にわとりの卵も農家が庭先で飼っているたまご。有力業者からの依頼もすべて断り、出荷が不安定でも地元農家の商品を優先させている。
 直売組合の会員は現在約380名。私は出荷されたものはすべて売りたいという気持ちだが、これは売れないという作物もある。一昨年より農産物の品質管理委員会を直売組合として立ち上げ、生産者自らルールを作った。そこで真っ先に注意されたのが社長の私。「社長の売りたい気持ちはわかるが、店の信用を落としてはならない。もっと品質管理を厳格にすべし」と。

道の駅として地域貢献活動も活発

 道の駅として地域との関わりも非常に大きい。毎年市内7つの小中学校に花の種を配る。12月には保育園などにクリスマスプレゼントを行う。自動販売機のアルミ缶の自主回収で地域の施設に車椅子を送っている。商品をもって老人施設などの訪問も行う。ボランティアを集めて道路清掃もする。今年は炎天下に380名がごみ拾いに集まった。延べ20数㎞のゴミ拾いだが、年々参加者が増えている。今年はいつやるかと電話がかかってくる。応援団も増えた。自動販売機メーカーから差し入れがあり、直売組合から豚汁、建設会社からダンプが出てゴミの運搬をしてくれる。このように道の駅が地域の活性化に役立っている。
 私の信条に身土不二がある。身と土は2つにあらず。生命は大地から生まれ、大地に帰る。これを地産地消の原点として地元産にこだわっている。


ディスカッション[2]

「全国のリーダーに聞く、直売活動の現状と新たな動き」

道の駅とよとみ 駅長(山梨県中央市) 萩原 一春
秋津野直売所「きてら」取締役員(和歌山県田辺市) 木村 則夫
おおむら夢ファームシュシュ代表取締役(長崎県大村市) 山口 成美
産直新聞 編集長 毛賀澤 明宏

毛賀澤:長野のリーダーからは出荷者の高齢化について問題提起された。農業振興の核となる直売所には、後継者育成、加工との連携、地域貢献、地域振興などの多角的や役割が求められている。

結婚式から法事まで年中夢求の直売所

山口・シュシュ:長崎県大村市の中山間地域にあるが、長崎空港からは約15分の場所。「素通りの町」から「ストーリーの町」を目指して頑張ってきた。これまでは通り過ぎる車の排気ガスばかりが残されていた。

 シュシュはフランス語で「お気に入り」という意味。地域の専業農家8戸で経営している。直売所の出荷者は120戸。民設民営の直売所。私も畜産農家。
 直売所も淘汰の時代を迎えたと言われている。農家の顔が見えなくなっている店もある。農家は朝、出荷したきりであとはこない人も多い。メール配信サービスがあっても、1日に3〜4回も顔出す人は少ないのでは。
壁に貼ってある農家の顔写真は10年前のものではないですか。それは詐欺ですね(笑)。消費者の心理をつかむにしても、スーパーと同じになっては駄目。
 私たちがアイスクリームを作るのは、若い人たちに果樹を食べさせるため。若い人達は爪が長いからか果樹もむけないらしく、こちらで果樹の皮をむいて加工品にしてあげて食べさせるまでする。
 旬の食材は一番美味しいが量がとれるため、売り場では残ってしまう。それをレストランや加工で活用する。店は結婚式から法事まで引き受ける。食材から花もあるし、加工品を詰め合わせた引出物も出せる。
 食育や農業塾にも力を入れる。荒廃農地が日本一多いのが長崎。この土地を活用して芋を植え、芋焼酎を作る。米こうじも作る。一緒に作って農業のファンを作って行く。原料で足りないものは作物を植え付ける。ドラゴンフルーツからパッションフルーツまで作っている。生産や商品は消費者のアイデアでどんどん拡がる。玉葱ドレッシングを作ったのも、野菜をもっともっと食べてもらうため。
 今年から農家有志が開業して農家民泊の受け入れもはじめた。婚活を支援するイベントも企画し、これまで16組が成立している。農家は年中無休だけど、「年中夢求」で活動を進めている。従業員は80名。女性が8割。お客様の7割も女性である。

地域住民が出資・運営する直売所

きてら・木村:大阪から約2時間、田辺市は海からすぐ急傾斜の土地。秋津野では柑橘にこだわる。行政からは品目を集中せよと指導されたが、多品種にこだわってきた。

 バブルの頃から近隣に住宅が増加し、新しい住民と地元住民のトラブルが生じたため、「秋津野塾」という地域づくり活動をはじめた。平成11年に直売所開設の話しに。新旧住民の手あげ方式で31名から10万ずつの出資が集まった。私たちの地域は野菜も米もわずかで柑橘ばかり。半年で手持ち資金がなくなったため、出資者が団結して、セット販売を開始した。
 これで息を吹き返し、プレハブから新たに店を開設した。「きてら」は「きて下さい」という意味。
 住民が計画・出資・運営する直売所。人も地産地消で進めている。元気な地域にはどこにも直売所がある。地域外からのお客様も増加。開設の目的は、農家の経営を豊かに、地域も豊かにしていくこと。地場産品を開発して、地域の経済を潤わせる。
 ポリシーは当初から変えていない。無理もしていない。あと10年してニーズがなくなったらすぐに引き上げる体制にもしている(笑)。今は20坪で1億5千万を売り上げる。これ以上大きくしたら品揃えも大変。
 出資者の出資額も平等。責任を明確にするため法人化した。きてらセットは年間6千セット販売する。
 女性の参加が少ないという意見を踏まえ、加工工房を設置し、女性グループが商品を開発した。農協出荷で1kg・3円で引き取られていたものを、自分たちは約50円で買い取っている。我々は物だけでなく、景観・人・文化もお客様にお分けしている。
 小学校跡地の活用も1年間かけて検討した。直売所プラスαを考えてきた。こちらも住民出資で(株)秋津野を立ち上げ、組織を別にすることでリスク分散を行った。先発の直売所「きてら」が成功していたから地域でも認められ、出資もしてくれた。廃校を活用した「秋津野ガルテン」には農家レストラン、宿泊施設も設置。オーナー制度も実施し、廃園も活用している。法人の構成員は農家ばかりではない。地域住民の出資を広く得ている。農家だけでは視野が狭くなるが、広く出資を募ったことで、組織としての視野が拡がった。

農家の自立と競争で日本一の直売所に

とよとみ・萩原:私は行政サイドにいる職員。直売所を立ち上げたきったけは、まちむら交流きこうの前身の21世紀村づくり塾の地域活性化勉強会。担当者は戦略・戦術を勉強せよと。まず5年は計画し、10年で成果が出るということを学んだ。

 私たちは遊休地対策からはじめた。養蚕の地域だったが桃の栽培を進めた。個人ではできない部分を農水省の補助事業などを活用した。費用対効果も求められてきた。私たちの地域は中山間地域。自立と競争をテーマに、自分で考え、地域間、生産者間で競争することを進め、出来るだけ農家のアイデアを採り入れた。
 私どもの生きる道は地産地消と確信し、道の駅と直売所を作った。戦略として、いつ、どこで、どのように情報を出すかが大切。イベント・宅配・バスの受け入れも進める。12年前からスイートコーン収穫祭を実施。平成10年から野菜のお土産ツアー(20種類)も売り出した。金額は小さくとも色々とお買い上げしてくれる。電話1本で注文できる宅配制度も充実させた。関東近郊は即日配達出来る体制にある。
 遊休地対策や土づくりも進める。新鮮で甘い野菜が出来るクリーンな堆肥を活用する。資源の再利用も地域ぐるみでとりくまないと実施できない。私どもは戦術・戦略を持って体制づくりができたからこそ、今日がある。今も消費者の意見を大切にしている。ひとつひとつ改革しながら現在がある。
 10年間は村営。平成18年から振興公社を立ち上げた。出荷者は約37名からスタートし、今は190名ほどに。


季節の果樹のジュースがずらり(シュシュ)
一年中柑橘がとぎれない店内(きてら)
もろこし収穫祭(とよとみ)


全体意見交換(まとめ)


全国直売所研究会 事務局長 青木 隆夫
グリーンファーム産直市場 小林 史麿
全国農産物直売ネットワーク 副代表 田中  満
産直新聞 編集長 毛賀澤 明宏

毛賀澤:第1部では長野県からの問題提起。農業振興、高齢化、加工との連携、複合化への道。第2部では先進事例、シュシュ、きてらなどの複合化。とよとみの地域農業振興。生産者サイドだけではなく、消費者サイドからの意見もあった。これらを受けて、今回の議論をどう感じたか。

運営者と生産者の意識の統一はされているか

青木:長野ならではの密度の濃い議論だった。複合化への道について考えさせられた。北関東人口50万の都市で地産地消と直売所の必要性のアンケートをとった。象徴的だったのは、市民アンケートの回収率が高く、自由回答の記載も多く、非常に要求が高いことが判った。農業体験させよ、地産地消レストランを進めよ、学校給食に出せなど。一方で生産者の自由回答は少なく、農家の所得向上のために必要だ、規模が小さくなったが所得を上げたいという金儲けの話が多かった。ここに市民と農家のギャップを感じた。
複合化の道は歩まざるを得ないが、まだ、複合経営する域にいっていない直売組織も多い。経営に参加している生産者、投資している人たちが共通の認識を持っているのかという不安もある。
 我々が主催した「直売所甲子園」も大きくマスコミに取り上げられた。テレビにも良く直売所が取り上げられる。一方で成功しているトップランナーばかりを見てしまうと悪影響もある。トップの域にない直売所がお客様からすると遅れていると見られてしまう懸念もある。運営側と生産者側の意識の統一が進められているか。最近の表層的な取り上げには注意もしなければというのが私の意見である。

地域農業を守る使命を持つ直売所

小林:直売所が盛んになったきっかけは、ほぼ全国共通している。高齢化の生き甲斐対策、規格外農産物の現金化、農村女性の自立と経済的支援が直売所草創期の起動力。農家のささやかな要求の実現のために作られてきた。地域の農家の農産物を地域の消費者のために供給するのが直売所。そこから進化して、今では直売所として地域をどうするか、地域農業をどうするかという高い水準の議論まで求められてきている。これから直売所が目指す理念・方向を明確にしなければならない。
 直売所は中山間地域の農業を守る力を担っている。新しい業態から直売活動への参入も増えているが、これは直売所の使命とは異なる経済的な使命に発する、自らの売り上げのために進められている場合も多い。
 私の直売所には1,800名の生産者が登録している。私も農家を規制せず、グリーンファームは全面的な自由。出荷時間も価格も自由。消費者に選択の自由がある。消費者がどのように選ぶかが生産者に伝わる。朝から晩まで次々と生産者が出荷して、1日平均2千人、年間56万人がレジを通過する。実は、農家も安定したお客様である。農家もすべての農産物を作っているわけではない。最も安定した消費者が1,800人いるということになる。お客様として農家の皆さんを大切にする。直売所こそ農村を活性化する拠点。私は直売所専業農家を作りたい。高齢農家も年金プラス100万の売り上げを目指して頑張っている。

直売所は6次産業化のリーダーである

田中:本日の議論は大変勉強になった。直売所は農業振興につながらなければならない。日本の農業は少数の専業農家と圧倒的な兼業・高齢農家に支えられている。これらの大半はもし直売所がなかったら農業をやめていた可能性がある。兼業・高齢農家の生産が地域住民の支持を得て発展したのが直売所。直売所は単なる小売業ではない。まさに地域の事業。ソーシャルビジネス、コミュニティビジネスというもの。直売所があるからこそ兼業・高齢農家が生きる道が見つかり、農業振興も支えられてきた。
 高齢化は日本社会全体の問題。これがいち早く進んでいるのが農村地域。その中で直売所だけは元気がある。死ぬまで頑張るという生産者が沢山いる。直売所の会員の権利を継承してくれるなら後継ぎになるという後継者がいる。
 直売所は複合化の先進事例でもある。私は10年近く前に「ほりがね物産センター」にきたが、そこには長野の伝統食や加工品がいっぱいあった。売り上げの半分くらいは加工品で当時で3億はあった。生産者1名当たりに割り返すと300万くらいの売り上げになる。ほりがねは複合化の成功事例。いわゆる6次産業化である。加工は2次、売る、食べるは3次。これらは1次産業がゼロでは決して成立しない。6次産業化を今村先生が提唱して約20年たち、これが日本農政の基本方針の3つの柱の2本目になっている。これは農家が主体で進めなければ意味がない。直売所は複合化が進んでいる。直売所の約半分はレストランや食堂・加工施設を持っている。直売所は6次産業のリーダーである。
 直売所は公設民営型が多い。施設を行政が作り、受け皿として直売組織を求めるケースも増加。全国約6千店ある常設直売所の半数は農業者主体で作られた店。うち約2割が組織の法人化を進めていると見ている。法人化の大きなメリットは信用力がつくことだ。

全体まとめ

毛賀澤:本日は盛りだくさんの内容だったが、新たな議論の出発点になったと思われる。さらに各地で議論を深めていただきたい。
 直売活動の始まりは1980年代から。農家の収入を作ろうと2000年くらいから継続的な事業としてのビジネス、マーケティングの経営的な視点が求められてきた。もちろん、その視点も重要だが、農業経営が厳しい状況の中、直売活動は唯一の成長産業でもある。皆さんのこれまでの苦労を知れば、ただで儲かる事業ではないと判るはずだが、唯一の成長産業として農外からの参入も多くなっている。このまま直売事業がスーパーや流通業に飲み込まれてしまうわけにはいかない。直売所が日本の農業を守り支えきたし、これからさらにその要請が高まるということを忘れてはならない。